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EO イーオーのmplaceのレビュー・感想・評価

EO イーオー(2022年製作の映画)
3.9
殆どセリフが挟まれる事なく、あくまでもロバEOの視点で進むロードムービー。
しかしEOが旅路で出会う人間達の振る舞いが傲慢で愚かで滑稽であったり、あるいは手を差し伸べようとするもうまくいかない不条理などが、瑞々しい映像と純なロバの瞳を通して繊細に描かれている。
しかしそれが決して上から目線でない感じなのが良かったと思う。

セリフが少ない分、映像表現と音楽もうまく物語にダイナミクスを与え、寄り添っていた。時折出てくる歪みのような音や、赤く染まった画面など、様々な示唆を与えてくれる箇所がたくさんあったが、このようなテーマが実験的な手法で且つこの規模の映画として撮られ、世界的にも評価された事は素晴らしい事だと思う。

終盤に出てくる聖職者らしき若者とその継母と思しき女性のシークエンスはどのように捉えて良いのか良くは分からなかったが、祈りの内容が大地の恵みに捧げられていた事からこの物語の主題をかえりみる目的があったのだろうと思う。

水槽に入れられた熱帯魚を見て鳴き声をあげるEOになんとなく泣きそうになった。

パルム・ドッグならぬパルム・ドンキー賞があったならこの受賞も間違いなかっただろう。
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