ねぎおSTOPWAR

別れる決心のねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
5.0
たぶん2度3度観ると、違ったところが見えてくると思います。味わい深い作品。パクチャヌク苦手な人も大丈夫だし、得意な人はある種驚きと共に満足出来るはず‼️

試写会で観せていただきました。
とても素晴らしい映画ですよ!
これはおススメ出来ます‼️
是非劇場でご覧いただきたいですね。

《追記》
忘れてた!・・これパク・ジョンミン映画ですからね!!Filmaキャストに入れていないけど!
《追記終わり》


パクチャヌク作品にしては前半から中盤はかなりカメラで遊んでいます‼️w😆
刑事が"誇りを持って"仕事して、まだ何かが始まる前というかグツグツしている時のギャップやすれ違いや惹かれ始める時のワクワクでもあるのかな・・観て新鮮な楽しいカメラですよ‼️
今回のカメラはパク・チャヌク監督としては初なんじゃないかな??
キム・ジヨンさん。
この方キム・ジウン(金 知雲)監督とコンビ組んで・・
シュワちゃん「ラストスタンド」でしたっけ?や
「密偵」
「甘い人生」など撮った方です。
他にも「スウィングキッズ」
「怪しい彼女」
「天命の城(これはパク・ヘイルね!)」
「エンドレス繰り返される悪夢」
「白頭山大噴火ペクトゥサン」
あと次にアップしますけど「恋の罠ー淫乱書生ー」という作品などなど。
韓国を代表するカメラマンの一人ですね。

具体的に言うと取調室が一番色々やってるかな・・。
フォーカスをどこに合わせているかとか、内部のモニタの映像をうまく取り込んで面白い向きで話しているとか・・・・。
全体的なルックもとても美しいグレーというか、雪も綺麗でしたねー。その中で”壊れてしまった”パク・ヘイルの蒼白い顔いろが凄い・・個人的には笑ってしまった・・でも見事です。

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《第一段階》:もうこれ以上知りたくない方はここで・・。下に少し観る際のヒントになりそうなこと書きます。




あとトークショーでさんざ話されちゃいましたがね、スマホのこと。(なんでも話しちゃうの問題ですよ‼️w)現代ドラマってスマホに悩まされているわけですよ。スマホがあれば解決しちゃうことが多いから。だからシナリオ段階で皆いかにそこ使えない設定を自然に作るかがポイントだったりするわけで。(今回の脚本担当は「お嬢さん」と一緒。チョン・ソギョンさんとパク・チャヌク共同脚本)
その点において今作は秀逸なんですよ。
例えば《どこかの》トリックにもなるし、心情を吐露するためのApple Watchだったり、証拠になったり、翻訳蒟蒻だったりね‼️一言巧い‼️
かつてのパクチャヌク作品よりもそこ秀でていたんですよね。

そして編集はキム・サンボムでしたね!いつもはサンボム=ジェボムで兄弟ですがね。編集は安定のサンボム技ですっごく観やすかったし、シーンや場所飛ばしたりするところでいつもより刺激的な面白さが全開していました!!殴り繋ぎとか・・ね。一瞬ハッとします。

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《第二段階》:以下ネタバレトークです。






いやあパク・チャヌクにグッときたタイミングはいくつかあったんですが、一つ目はね・・
パク・ヘイルがこっそりとタン・ウェイと犬との中国語の独り言を録音するシーンあったでしょ。それを自動翻訳すると「・・刑事の心臓が欲しいわ・・」となった。その時点では彼女の恋心はわからないし、猟奇殺人鬼かという疑いもあるわけで、それを煽るようなパートなわけですよね。そして・・「あぁそれは心臓(シンジャン)じゃなくて心(マウム)が欲しいってことよ」って告白したでしょ。心の中で『うっま!!』って叫んでた。

これはある種伏線となり・・

彼女が「あなたが言った『愛してる』って言葉を繰り返し聞いていたの」という部分。
パク・ヘイルと一緒に
「えっ・・そんなこと言った??聞き逃した??いや、言ってないよね・・」となりました。
そしてしばらくして彼女が部屋で録音を聞いて涙しているシーンが回想として出てきます。そこでは「僕は完全に崩壊してしまいました・・スマホを海に沈めるんだ・・」と言っているわけ。で、演出というか・・それがイコール彼女にとっては「愛してる」って聞こえたんだなって観客は理解する場面。『うっま!!』

つまりは男と女に限らないけど・・思っていることと、口に出すことは異なり、(刑事同士で中国人だからわかりやすく表現しろよ!とかやっているところも伏線となり)わかりやすく話すことと含ませる言葉も異なり、口にした言葉は嘘だったり、妻とも会話は嚙み合わず「えっバレた・・?え、そっち!?」みたいなくだりは2回あったでしょ・・
もうこれでもかってくらい性別や諸々を越えて言葉が伝わらない世界。

そう考えるとラストの彼女はパク・ヘイルが言った「秘密を隠す場所」に自分を隠したわけで・・。でもパク・ヘイルはそういう意味で言ったんじゃないわけで。

あと手錠も不思議でしたよね。
本来刑事が犯人にはめるであろう手錠・・でもあれは愛の表現のようでもあり、彼女がパク・ヘイルを縛っている表現にも見えてしまいました。
そして(トークショーで言われてしまいましたが)ラストの彼女の掌の上にパク・ヘイルがいるかのような画の繋ぎ。
そもそも掌も重要なファクター。
とても柔らかい手と殺人を犯したために荒れた手、傷ついた手と頬に当てた手・・車の中で重なる手・・。

今回パク・チャヌクにしてはセックスシーンもバイオレンスシーンもないという話題になっていますが・・
なんのなんの、最も官能的だと感じました。
裸は出ないし、唯一のセックスシーンも奥さん普通の顔しているしパク・ヘイルは「シェイプオブウォーター」のストリックランドのような苦い顔して腰動かしていました。
しかしタン・ウェイがパク・ヘイルを寝かしつけるシーンのエロさと言ったらもう!
呼吸を合わせているだけなのに、脳内に広がる耽美なニューロン。

なんか快楽ってこういうことかなと妙に納得しました。


冒頭にも書きましたが、これは何度か観ることで新たな発見がある映画だと思います。
おそらくタン・ウェイが「崩壊する前のあなたに戻って!」というセリフはもっと深い意味があるはずで。
136歩のトリックのしたたかさも恐ろしいのですが、どうにも一致しない彼女の実像・・これももっと見えてくるはずで。
二人目の夫との出会いや諸々もだいぶ端折られていて、そこを推察できればまた広がるはずで。

いやあ、最後の陽が沈んでいくシーンは名シーンになりますよねー。
あの夕陽は何日かけて撮影したんだろう・・
穴の中からの水が入るところもそうだし、徐々に暗くなるのはカラコレだけではここまで美しくならないと思う。大変な撮影を経て、彼女の埋まっているだろう上で二度目の崩壊を迎えたパク・ヘイルの演技は絶品。彼史上で最も心の壁が壊れていた男でした。

あと音楽って呼ぶんだろうなあ、奇怪な表現の音を含めて。
そしてマーラーの交響曲5番?あの有名な第四楽章がね、「ベニスに死す」が有名ですけどね、良い曲ですよねー。狂気を含んでいる穏やかさが好きなんですよね。


覚えている限りのことを列挙しました。
あー、疲れた。ww

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