岩山から満潮の浜辺へと転落していく男と女の情念の物語。山と海、刑事と被疑者、観察者と被観察者、韓国語と中国語、フィジカルとプラトニック、目薬とリップクリーム、と様々な対義的なモチーフが劇中に散りばめられている。そうそれはまるで刑事が押収をした殺人事件の証拠品のよう。そしてただ並べていても証拠品が自ら語り出すことがないように、本作も何が正解で何が真実なのか説明的な描写は一切ない。そのモチーフを元に観察力と想像力を駆使して観客が探り当てるしかない。だからこそワクワクするしだからこそクソエロい。
ハンドクリームを塗りたくる行為があんなに官能的だなんて思わなかった。それに対して唯一のSEXシーンは蛋白そのもの。今までのキャリアから脱皮しようとする監督の気概が感じられてドキドキする。
回想や証拠品の再生などで何度も同じフレーズが繰り返しリプレイされるのも特徴的な演出。また韓国語の海の中に突如中国語の赤い血しぶきが湧き出すような音のぶつかり合いも魅惑的。そんな様々な聴覚的なアプローチも素晴らしい。
男が女に、逆に女が男に狂っていくのに肉体的な交わりなんて全く必要ない。そんな現代的なファムファタール像もまるで今のアイドル業界に代表される推し文化を揶揄しているようで痛快。
見終わった後は無性にお寿司が食べたくなった…。てか、醤油をドリップする行為ってなんかエロいよね🤦笑
