りょー

別れる決心のりょーのネタバレレビュー・内容・結末

別れる決心(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「誰が犯人か?」より大切なのは「その人は私を愛してくれているか?」。言葉じゃ伝わらない”本心”を見事に描き切ったサスペンスロマンス!

【あらすじ】
男が山頂から転落死した事件を追う韓国人刑事のへジュンは、被害者の中国人妻ソレに疑惑の目を向ける。しかし、捜査を続ける内に惹かれ合う2人。事件の真相が明らかになった時、物語は更なる深い”霧”に包まれていくーー。

【感想】
韓国語と中国語の言語の違いや、節度を持った大人の理性によるもどかしさ、その裏にある人の心、”本心”が、落ち着いたメタファーと映像・脚本的表現によって、しっかり炙り出された上質なロマンス!

「賢い者は水を好み 慈悲深い者は山を好む」

孔子の一節が引用され、ソレは水(海)、へジュンは山(木=水を欲す者)として対照的に描かれていきます。本当に賢い・慈悲深い選択なの?って切り口も、本作を味わう上で大切なのかも知れません。山であり水でもある”霧”が、たびたび登場していたのも、恐らく重要な舞台装置だったんだなと思うと、無料配信されたらもう一度見たいという気にさせられました。街では降らなかったあの山の”雪”も、理性・賢さ(水)が凍りつく(機能不全の)メタファーだったのかね。ソレの服の色が青か緑か問題も、そう考えると面白いセリフになってきます。

「疑いが2人を引き寄せ 愛が2人を引き裂いた」

このキャッチコピー、、、痺れますね。ヒッチコックや成瀬巳喜男監督の某作品などなど。パクチャヌク監督は、古典的傑作をやりたかったという話をされていましたが、脚本に美術に撮影に衣装にキャスティングに…製作陣営の手腕にも拍手喝采な作品でした。勉強になります。

ソレ役のタン・ウェイさん、存じ上げなかったのですが、本当に中国の女優さんだそうで。韓国語や中国語が分かると、また演技としても面白かったりしそうですね。吹き替えがあるなら是非そっちでも観たい。

色々書きましたが結局のところ、最も賢く慈悲深く、”別れる決心”ができたのはへジュンの奥さんなのかも知れませんね。
りょー

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