tsuku83

別れる決心のtsuku83のネタバレレビュー・内容・結末

別れる決心(2022年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

相変わらずパク・チャヌク作品は1度見ただけではすぐにその描かれているキーワード的なものを拾い集められないな~。初見だと混乱、いや、困惑してしまう。が、日が経つと少し整理できる感じがしてくるのも面白い。
誰が見ても真面目そうな刑事のヘジュン、その妻は若くして責任ある職についていて、二人の仕事場は別なので週末婚。この時点ですでに妻が優位な感じがあったけど、睡眠不足で居眠り運転しそうになるほど疲れている中でも妻に会いに行くヘジュン。もはやこの時点でヘジュンの不眠による世界のあやふや感があるだよね。そんな中で夫が死んで被疑者としてやってきたソレ。ソレは中国人であり、韓国語はところどころおぼつかないし、使いかたも間違える。ああ、これはどの国でもあるな~きっと。外国人が言葉を間違っている時に気づいて、それを正しくしてあげる人、そのまんまの意味だと受け取り嘲笑する人(変な人と思う人)。ヘジュンは前者で後輩は後者という感じか?この映画、さりげなくさりげなく外国人への差別意識とはこういう所に滲み出ているのだよ、という事も描いているんだな。
あと、聴取中の食事に高価(な店なのかな?)の寿司を出前して食べさせるあたり、もうこの時点でヘジュンはソレに惚れてるよね。一目ぼれか?
なので、もうこの時点でヘジュンは真面目でもなんでもない、私情を思いっきり入れた刑事になってしまったんだな~と思ったのだが、本人がそれに気づいていないからそのあとのいろんなシーンがとにかくヘジュンの行動と言動がその心理に結びついていない違和感。確かにそれは眠くて眠くてふわふわしている時に置き換えることもできる違和感かもしれない。
ソレは単純に、間違った表現をしようが「ちゃんと」自分の話を聞いてくれる良い刑事さんという感覚だったと思うけど、それが少しづつ変わっていったという感じか。
いずれにしても直接の感情のやり取りはない。それは現実か?というのはヘジュンの夢だったり。ただ、言葉の端々に思いをそれぞれの形で受け止めていて。だからソレが言う「愛してる」と言われたという事を理解するのに時間がかかってしまったヘジュンはソレを救えなかった。でも、ソレは今まで自分を支配ばかりする男たちの傍にいたので、ヘジュンからの言葉は解放されたような気分だっただろう。解放されすぎて、思考が特殊すぎて、のラストだったが。「あなたの未解決事件になりたい」とはなんとも怖い言葉だ。
ラストはまさにそのソレの希望と共にヘジュンとソレの認識時期の違いが表れているシーンだったな。それは悲しいように一見思えるけど、私にはとても恐ろしく感じた。最終的にはソレのその行動は死してもなお、愛した人の心に住み着きたいという執着であって、憑りつくのと同じようにも思え、恐怖しか感じなかった。という意味で怖い映画でした。あと、ヘジュンはきっと妻と別れてストレスなくなるので睡眠障害はなくなる気がするとなんとなく思ったよ。あのラストの世界から生きて帰れていればだが。
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