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別れる決心のkuuのレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
3.9
『別れる決心』
原題 Decision to Leave
映倫区分 G
製作年 2022年。上映時間 138分。
『オールド・ボーイ』『お嬢さん』のパク・チャヌク監督が、殺人事件を追う刑事とその容疑者である被害者の妻が対峙しながらもひかれあう姿を描いたサスペンスドラマ。
『殺人の追憶』のパク・ヘイルがヘジュン、『ラスト、コーション』のタン・ウェイがソレを演じ、『新感染半島 ファイナル・ステージ』のイ・ジョンヒョン、『コインロッカーの女』のコ・ギョンピョが共演。
2022年・第75回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。

男性が山頂から転落死する事件が発生。
事故ではなく殺人の可能性が高いと考える刑事ヘジュンは、被害者の妻であるミステリアスな女性ソレを疑うが、彼女にはアリバイがあった。
取り調べを進めるうちに、いつしかヘジュンはソレにひかれ、ソレもまたヘジュンに特別な感情を抱くように。
やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに見えたが……。

映画の前提はいたってシンプル。
人里離れた場所で男性が遺体で発見され、その死因は登山中の事故であった。
しかし、彼の妻ソレの行動には謎めいた不審な点があり、ヘジュン刑事は未亡人との距離を縮めていくような事件の捜査を任される。
すでにどっかで見たことがあるよな初期の前提やけど、韓国の映画監督がその素材でやったことは、このジャンルで誰もやったことがないことかな。
早い段階から、パク・チャヌク監督はすべての要素をコントロールしていることを証明している。彼は自分の望むように映画を進行させ、観てる側をどこに連れて行きたいかを知っているが、決して楽な道には連れて行かず、画面に映っているもの、映っていないものに全神経を集中させる。
全く斬新なものから、この監督らしいものまで、あらゆる好みに合わせたショットやアングルがあった。
知的な脚本は我々を引き込み、強く引きつける。
刑事役のパク・ヘイルは、非常に共感しやすいキャラを演じていた。
自分が何を感じているのか、あるいはなぜ妻に嘘をついているのか、多くを語る必要のないキャラと云える。
それにつけてもおやつはカール🎵じゃない、それにしても、ユニークな映画作りの手法によって、彼が見ているものを見、彼が嗅いでいる匂いを嗅ぎ、彼が感じているものを感じながら、我々を登場人物の頭の中にすっぽり入れてしまった監督の功績は大きい。
しかし、パク・ヘイルが傑出したレベルにあるとすれば、演技の分野での主役は未亡人ソレ役のタン・ウェイかな。
ファム・ファタール(男にとっての「運命の女」運命的な恋愛の相手、もしくは赤い糸で結ばれた相手というのが元々の意味であるが、同時に「男を破滅させる魔性の女」のことを指す場合が多い)という役柄は彼女にぴったりで、これほどうまく演じられた人物はいないとさえ個人的には感じた。
謎めいていて、ミステリアスで、説得力があり、そして。。。
誰もが彼女に恋してしまうのも完全に理解できる。
最初は、彼女の純真さ(都合のいいことに、彼女の韓国語能力の低さと結びついている)が我々に優しさを求めるとすれば、彼女がその全人格をさらけ出し始めたとき、彼女はさらに魅惑的になり、常に何か危険なものを連想させ、それがすべてをさらに誘惑的にし、彼女のキャラの力と神秘性を際立たせる。
今作品は、焦点を根本的に変えたときでさえも、常に魅力的な映画であり、次に何が起こるかわからない緊張感を我々に与えてくれます。
3つの異なる幕があり、その3つすべてが巧みに機能していたし、あるショットは本物の芸術作品のようであり、おそらくそれがこの映画の中の芸術作品なんかな。
愛について、禁断の愛にまつわる恐怖について、裏切りについて、結婚について、嘘について、前に進もうとする意志について、常に我々の一部であるものについて、離れる意志と決断について非常に焦点を絞った映画であることを期待している。
この監督のこのテーマの映画には、多くのホットなセックスシーンが期待される。
何しろ、この監督の過去作のいくつかに強烈なセックス・シーンがあったことは記憶に新しい。
チャヌクはその期待を完全に裏切る。
ここではセックスは重要ではない。
ここでは、セックスを超えた純粋な気持ちや感情について話していた。
実際、今作品のいくつかの場面で、彼はそう云いたかったんやと思う。
冒頭のシーンで、刑事の妻が定期的にセックスすることを提案する場面、同じ女性が毎週セックスする必要があると云う場面、今作品で唯一のセックスシーンである夫婦の再会を見る場面(これは映画全体でも最もセクシーでないシーンでもある)セックスと愛はまったく別の概念なんや。
禁断のカップルが求めているのは、それ以上の何かであり、2人が互いに感じているのは、肉欲を超えた激しい炎と極度の親密さであり、2人の感情、人間の内面的な限界まで踏み込んだものなのだと、浅はかな小生は思ったかな。
パク・チャヌクはより成熟した提案で、我々が見慣れた彼ほど過激ではなく、彼は善きスリラーだけでなく、リアルで激しいロマンスを含む映画を魅せてくれた。
感情を呼び覚ます、感情についての映画でした。
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