CHICORITA主任

逆転のトライアングルのCHICORITA主任のレビュー・感想・評価

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
4.0
格差・差別・社会、ひいては人間そのものを鋭く批評するブラックコメディ。

豪華客船に集まる超金持ちたちとそれに仕える船員たち、そしてセレブを気取り上流階級に寄生するインフルエンサーとその彼氏。
上流階級の退廃、革命による社会構造の逆転、そして新たな支配層の出現…と繰り返されてきた人間社会の歴史を露悪趣味たっぷりに描いており、特に中盤の嵐と食中毒でゲロゲロの醜態を晒すセレブたちの姿にはもはや笑うしかない。

結局人間は上流も下流もおしなべてクソ野郎どもばかりであり、革命も立場をシャッフルするだけで人間の本質を変えるものでは無く、新たな支配層となった者が手にした権力を逃すまいと搾取と抑圧を繰り返す。そんな人間のどうしようもなさが描かれていると感じ、ちょっと暗澹たる気分になってしまいました。
ラストはあえて結末をぼかすことで、観客側に委ねる形になっていましたが、個人的には明るい未来は信じられなかった。

全体がブラックな笑いに満ちており、テンポよく進んでいく物語が楽しく、社会風刺色の強いアート系寄りの作品ながら、エンターテイメント作品としても楽しめる素晴らしい作品でした。
観る人を選ぶ部分もある映画ですが、カンヌ映画祭パルムドールは伊達ではない一本です。
CHICORITA主任

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