ピロシキ

逆転のトライアングルのピロシキのレビュー・感想・評価

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
3.5
2時間半の内訳は、ザックリと第1部30分・第2部1時間・第3部1時間。冒頭のファッションショーで背景に映る"Cynicism Masquerading as Optimism"(楽観主義を装った皮肉?)といった文言が、この2時間半でオストルンド監督が達成したい目標なのだと解釈する。どうやら「風刺コメディ」とまでよばれているみたいだし、そういうことならば盛大に笑ってやろうじゃないの、などと気合いを入れてはみたけれど、結局最後までクスリともせず終了した。

第2部で明示したヒエラルキーのトライアングルを文字通り第3部で逆転させるような構成にはシンプルに引き込まれたのだけど、全体としていまいち乗り切ることはできなかった。

面白くない、つまらない、見ていて決して気持ちが良くない光景を「あえて見せる」という意図はあるのだろう。とはいえ、なんだか作為的な、もっというとなんだか露悪的な、なんというかこの「ドヤ感」が少し気になってしまった。

ブルジョワジーがゲロまみれのクソまみれになるさまを見て不快になるのではなく、この「どや、これが風刺でっせ」というあからさまな雰囲気がちょっと気持ち悪いと感じてしまった次第である。ど真剣にズレてる人間たちの様子が滑稽に見えるのではなく、はなから滑稽に見えるようにズラして見せているというか……そこは(監督も参考にしたであろう)ミヒャエル・ハネケの作風とは大きな差がある(あるいは遠く及ばない)ポイントだろうと考える。

不快に思うのだって、監督のオモウツボ。なんてったってタイトルそのものの意味が「眉間のシワ」なのだから、眉をしかめるのが正解なのだろう。シャラくさいのぉ。
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