ダイナ

逆転のトライアングルのダイナのネタバレレビュー・内容・結末

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

人間の高慢さや哀れさといった本質を現代的なテーマを添えて描いた解釈委ねる逆転サバイバル悲喜劇。原題の「Triangle of Sadness」とは眉間の皺を指す言葉。悩み事の象徴として用いられたこのワードは邦題では逆転の〜となっていました。「逆転」したヒエラルキー展開に重なりとても好みです。

サバイバル状態に置かれた時、個人が所有する財産は全くの無価値(作中にあったように帰った時の見返り交渉には使えるけども)となり、問われるのは「自身が何を成せるか」というスキル面。トイレ清掃婦のアビゲイルがキャプテンに君臨しその他は追随せざるを得ないという状況の痛快さもさることながら、日が経つにつれその人間関係も一筋縄で束ねられなくなる不穏さも魅力的。ロシア富豪と黒人船員が海賊疑いで険悪となっていたけども日が経つと関係が良好になってるカタルシスや、カールがアビゲイルと寝てからの数日後にはヤヤがアプリ親父にキスしてやり返すという拗れ具合。島に到着してから関係がくるっと変わる場面が多くとても面白かったです。

ディナー時の悲劇の発端は船酔いだと思っていますが、ただの船酔いだったのか?そして原因は他にあるのではないか?という点が気になったので書き残しておきます。キャプテンズディナーというものを知らないのですが、船長参加の特別なディナーということでいつもの豪華さよりもさらに気合の入った料理を振る舞う場だったのではないでしょうか。牡蠣やらゼラチンの何かのような、高級料理でよく見るけど微妙に「嘔吐」の印象に遠からず結びつくような鮮度のある食品が多かった気がします。序中盤辺りで女ロシア富豪が全スタッフに今すぐ泳げ!と迷惑千万で自己満足なうぜ〜注文をしてきた時に厨房で食品が傷んでしまうというようなセリフがありました。一時的に離れることで痛ませてしまうスタッフ側の食品管理の問題もありますが、上位ヒエラルキーによる横暴がわずかながら関わっていたのではないでしょうか。また荒れ時の木曜日は避けてくれという言葉に木曜日じゃなきゃやーやーなの!と謎のこだわりを押し通したキャプテン。彼のタフネスはどうであれそんなぐわんぐわんになること想定されるクルーズでディナーを食わされる客のことに考えが及ばなかったのか。そう考えるとあの悲劇はサーブ側と客側の両方のちっさい歯車が噛み合っちゃった結果のようにも思えます。船長とロシアマダムは島での様変わり具合を見てみたかったですね。(でも船長は普通に無双しそう…)

炎天下の作業員が上裸とか帆の汚れとかうるせえなあもうと思いますが、カール含め客側も根っからの極悪の意地悪キャラというわけでもなく、優しい面や他人への礼儀も見えます。人間のネチネチした部分は善悪関係なく誰しもが持っているという普遍性も国境を超えて本作が評価される所以なのではないでしょうか。そういう自分もここでネチネチと綴っていて恥ずかしい。

ラスト、アビゲイルはヤヤに懐柔されたと思ったんですが、やっぱり始末したんですかね?どうでもいいですがあのエレベーターはリゾートってより秘密基地っぽいぞ!
ダイナ

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