ぶみ

逆転のトライアングルのぶみのレビュー・感想・評価

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
3.5
この転覆劇、あなたは笑えるか?!

リューベン・オストルンド監督、脚本、ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン等の共演によるスウェーデン、フランス、イギリス、ドイツ製作のドラマ。
セレブを乗せた豪華客船が嵐と海賊に襲われ、無人島に漂着した人々の姿を描く。
主人公となるファッションモデル、カールとヤヤををディキンソンとディーンが演じているほか、豪華客船の船長としてウディ・ハレルソン、船の清掃係としてドリー・デ・レオンが登場。
物語は、カールとヤヤの二人を中心に、中盤までは船が嵐に巻き込まれ、揺れ続ける姿が描かれるが、床を右に左に様々な物が転がり続けるとともに、皆吐きまくりで、ここまででもパニックものとしてお腹いっぱい、ゲロいっぱい。
その後、後半は一転、無人島に漂着した人々のサバイバルものとなり、ここからの人間関係の変化が最大の見どころなのだが、そこに至るまでもそうだし、そこからの展開も少し長かったかなというのが正直な感想。
無人島生活は、ある意味日常から離れた異次元空間となっており、そこから、また日常に戻る恐怖を感じさせるラストは深い余韻が残るもの。
残念なのは、本作品が映画主演デビューとなったペネロペ・クルス似なディーンの遺作となってしまったこと。
また、原題である『Triangle of Sadness』は、眉間の皺という意味なのだが、その原題の語感を活かしながらも、意味が全く違う邦題としているのも悪くないところ。
肩書きや財産など、その人を覆う薄っぺらなものでしかないことをユーモアと皮肉たっぷりで描き出すとともに、肝心なところを見せない手法で、観る側の脳内補完を問う部分と予算削減の一石二鳥ぶりが見事である反面、船内のシーンはこちらも酔いそうになるため注意が必要であり、もう少し無駄を削ぎ落として尺を短くしても良かったかなと思う一作。

闘うか、奴隷になるか。
ぶみ

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