れんれん

逆転のトライアングルのれんれんのネタバレレビュー・内容・結末

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

観ていると船酔いします! わざとそう撮っています。そして下品! これ、ほめてます!!
だいたい映画史上、これだけ◯ロ吐くシーン映した作品あったでしょうか? 個人的なことですが、船に弱いので、もらいそうになるといいますか……。

さておき、豪華客船のお客はセレブばかりで、接客を担当する乗務員たち(白人)と、裏方で働く乗務員たち(有色人種)と、わかりやすいくらいに階層や人種に線を引き、セレブの放つ腐臭をハエとその羽音をしつこいくらいに被せることで表現し……。

ジェンダーロール、貧富、フェミニズム、ルッキズム、SNS、資本主義と共産主義の行き着くところ……と、現代のテーマをてんこ盛りに盛り込みつつ、つまるところ、生きることに直結する能力者じゃなきゃ勝てないシチュエーション=それが、船が爆破されて無人島に流れ着くという展開。「めぞん一刻」では、俺の方がより大きな魚をつかまえたと、五代君と三鷹さんが管理人さんにアピール合戦していましたが(実は文明がすぐそばにあることを知らずに、無人島に流れ着いてしまった、とサバイバル合戦する……という悲喜こもごもを30年以上前にやってる高橋先生は天才)、この状況でヒエラルキートップに立った豪華客船トイレ掃除担当の中年女性が、権力掌握のあとに求めたのは、「イケメンの若い肉体」というあたり、監督の「人間なんてそんなもの」という突き放しがうかがえました。女性がイケメンに目を付けたのも、「私と同じで、深く考えていなさそうだったから」という言葉にも強さを感じます。
ラスト、中年女性は、ヤヤというインフルエンサーでありモデルの情にほだされて文明社会に帰ることを選択したのか、逆の選択をしたのか。
それが時間の問題だったとしても、女性は無人島で女王を続けたのではないかなと、私は想像しました。そんなあっさり情にほだされるほど、差別構造は浅くないし。
とはいえ、あまり深く考えないで行動するのも人間だし……なんてグルグルさせられるのもまた、本作の魅力ですね。

ヤヤ役を演じた女優、チャールビ・ディーンが、犬や猫の口の中に存在する細菌由来の敗血症で32歳の若さで亡くなっていたことを追記。

あと、ル・シネマ、今の場所ではなくなってしまうのですね。「覇王別姫」とか「太陽と月に背いて」とか「王妃マルゴ」とか、90年代、学生時代にお世話になりました。自分の中の映画の基準を築いていただきました。ありがとうございました。
れんれん

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