セサミオイル

逆転のトライアングルのセサミオイルのレビュー・感想・評価

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
4.8
まずインフルエンサー役を演じた主演女優チャールビ・ディーンさんの遺作になってしまった事が残念でなりません。
R.I.P

非常に面白かった。前作『スクエア』は小難しい部分や実験的な部分があり難解というか遠回しというかもやっとしてましたが言いたい事は似通ってるかなと思います。今回はよりシンプルになっていて焦点もパッキリとても明解に出来てます。
話はシンプルですが一貫して芯が太く質量があり全ての台詞に意味があるのでどこを切り取っても見応えがあり面白いです。コメディ扱いされてますが僕はずっと「すごい…」と思いながら感心して観てました。(予告編は笑ったけど!)
現代人には人間の中の野生の部分、人格の素の部分と社会人モードの取り繕う部分があり、いち個人の中にそこの軋轢が大小あります。好き勝手やりたいけどここだけは他人に気を遣わないとね。というように。
資本主義にどっぷり浸かり丸々と太って蓄えた思想的贅肉を全部剥いだ状態で改めて人と接する。肩書きは脱ぎ捨てて野生と本能だけで人間関係の在り方を再構築して見せてくれます。
その過程において見栄とか虚栄など無駄で馬鹿らしい思考が炙り出されてきます。
同時にジェンダーロールの問題も見事に整理して見せてくれました。

映画自体も余計なエピソードが無いんですよね。憎まれ役として充分な資質を備えたキャラが沢山出てくるのに例えばその人達の頭に鳥のフンが落ちてきたりとかそういう安易な貶めがないんでそこに大人を感じました。唯一身から出た錆描写がありましたが唯一だから重みがあります。
とにかくカメラや演出は登場人物達に公平なんですよね。誰にも肩入れしない。

上から下からの汚物シーンに関して。
下からのやつは僕も全然ダメで薄目にしました。上からのやつは案外平気だったのでラッキーでした(笑)

ラストに関してはどうしても言いたい事があるのでコメント欄に。