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逆転のトライアングルのらのレビュー・感想・評価

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
3.8
無邪気に面白いと言いづらい感じはあるものの、リューベン・オストルンドの作品はやっぱり面白い。その意地の悪さも含めて。前二作に比べると良くも悪くも「わかりやすさ」と「エンタメ性」が前傾化している印象はあるけれど。どこまで人間を皮肉っていいのか、憎悪を向けたりからかいの対象にしたりしていいのかのバランスは難しいが、現代社会の格差の構造自体は風刺されて然るべきだとも思う。

本作もオストルンドの過去の作品の例にもれず社会実験的である。とはいえ、結構ちゃんと映画映画しているところもあるのが信頼できる。高級食材(傷んだ)をふんだんに使った船長のおもてなし「キャプテンズ・ディナー」の最中に次第に船の揺れが激しくなり、船酔い客が続出して嘔吐と溢れ出す汚水の地獄絵図と化すシーンには映像ならではの力強さとカタルシスがある。しかし、個人的にはむしろ、単純なインパクト重視の危うさもある「富裕層汚物ゲロまみれシーン」より、それまでの船内の絶妙な人間模様のキモさ、違和感、緊張感、ひずみ、フラストレーションが次第に強まる"揺れ"として映像的に表現されている部分の方が優れていると思う。
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