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ヨーロッパ新世紀のkazuoのレビュー・感想・評価

ヨーロッパ新世紀(2022年製作の映画)
4.0
トランシルバニア地方の小さな村で、パン工場がアジア系外国人労働者を雇ったことで村の秩序の崩壊を恐れ受け入れたくない村民の排他的行動などを描いた社会派作品。

作中の外国人労働者は真面目で村民の行為は明らかに差別なのだけれど、村民の言い分は少人数でも受け入れるとどんどん増えてきて、やがてコミューンを形成し村の治安を脅かすというもの。これはヨーロッパの移民問題が背景にあり決して差別前提の妄言とは言い切れない。
また、これは本心ではないだろうが、嫌っているのではなく幸福になって欲しいが、それは自国でなってくれとの発言もあった。
これはつまり排他的ではあるが差別と言い切れない部分もある。自分の住む地域は変わってほしくない、平穏で暮らしたいという皮膚感覚。過疎化等、舟は沈みつつあるのだが。

共生の概念で感じるのは、受け入れ側は入ってくる側に対して理解を求められるが、逆に入ってくる側の受け入れる側に対する理解は求められていないのではないか。郷に入れば郷に従え、は日本人独自の感性で、自国の慣習が当たり前でそれと違う他国の慣習はおかしいとするケースは多いのではないか。

他国文化を受け入れ自国文化を失っていく。悪しき慣習は淘汰されるべきだが、"受け継がれてきた慣習=悪"ではない。
慣習や言語の違いは想像以上に理解を妨げる。そして理解困難は双方に被害者意識を生み対立を深くする。

今後難民や外国人労働者の受け入れを積極的に行うと思われる日本の国民として、多くの人に観てもらい考えて欲しい作品。
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