カタパルトスープレックス

アルマゲドン・タイム ある日々の肖像のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

4.5
ジェームズ・グレイ監督による1980年のニューヨークを舞台とした人間ドラマであり自伝映画です。

おそらく子供を持った方なら色々と考えさせられると思います。ボクはそうでした。程度の差こそあれ、子供の本質は「反逆者」なんだと思います。反発するし、ネガティブなことを言うし、世間知らずで自己中心的。日本語には厨二病なんて便利な言葉がありますが、まさにそれ。本作の主人公のポール・グラフ(バンクス・レペタ)はまさにそれ。

親にとっては試練の時です。自分も長男が高校生の時はよく学校に呼び出されました(苦笑)。ポールの親のエスター(アン・ハサウェイ)とアーヴィング(ジェレミー・ストロング)も悩みます。親だって子供を育てるのは初めてなんだから、未熟なんです。でも、ここは乗り越えないといけない。グラフ家にとって幸運だったのがお手本を示す祖父のアーロン(アンソニー・ホプキンス)がいたこと。

反面、友人のジョニーには両親がおらず、祖母も病気で力になれないこと。グラフ家はユダヤ人家系で、ジョニーはアフリカ系家系。差別を受けてきた歴史がある。でも、周りの影響で違いも出てきてしまう。本作で描こうとしたことはいくつかあると思いますが、「強くあるには」はその中心にあると思います。ひとりでは無理でも信頼し会える人たちが周りにいれば乗り越えられる。

祖父アーロンは「人生は不公平だ」といいます。だから、強くならないといけない。本作ではレーガンが大統領になって新自由主義の時代に突入するアメリカも描かれています。新自由主義でアメリカの貧富の格差は更に広がります。トランプ元大統領のお父さんのフレデリック・トランプも登場しますし。ジョニーは新自由主義の犠牲者の象徴とも言えます。

もう一つ描こうとしたのは1980年代のニューヨークだと思います。シュガーヒル・ギャングがその象徴でしたね。80年代を舞台とした優れた映画は沢山ありますが、本作はその中でも指折りの作品でした、自分にとっては。