年内最後に鑑賞作にして、凄いモン見せられた。
アリ・アスターも絶賛の『エヴァの告白』や、ドストエフスキー“白夜”の映画化『トゥーラ・バーズ』、『リトル・オデッサ』等の傑作で知られる私の好きな監督ジェームズ・グレイ最新作。
ブラッド・ピット主演の前作『アド・アストラ』は、試みはわかるのだがぁ…といった彼“らしからぬ”SF作品だったわけだが、その反動から今回は故郷の80年代ニューヨークを舞台に、自身の幼少期の痛み、両親との確執を描き焼きつけた極私的な自伝作品に。
その邦題からちょっとナーメテーター案件だった本作だが、蓋を開けてみれば“成功の裏には誰かの犠牲が伴う”ということを突きつけてくる厳しい厳しい傑作映画であった。映像のタッチこそ違えど、個人的にはテレンス・マリックの『ツリー・オブ・ライフ』を彷彿。
『セブン』『ファニー・ゲーム』等も手掛ける撮影監督ダリウス・コンジのショットは素っ気ないまでにクールで陰鬱で端正。
アン・ハサウェイがこういう作品選びをする感じは、どこか『レイチェルの結婚』(ジョナサン・デミ監督)を思い起こさせる。小さい映画ながら良質なアメリカインディペンデント映画である。