木蘭

CLOSE/クロースの木蘭のレビュー・感想・評価

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
4.8
 移ろいゆく美しい自然光と少年達の自然な演技を写し撮った、奇蹟の様にも思える見事な作品。

 ゲイである監督が幼少時代に抱いた思いを投影しているので、同性愛的な要素はあるけれど、そこは背景の一つとして捉えて、普遍的な物語として観て欲しいな。

 良く見ると2人の少年は、家庭環境も趣味も実は全然違うんだけど、それが兄弟の様にいつも一緒に戯れているのは、幼なじみという奇蹟・・・

なんだけど、男の子って周りの環境で一足飛びに成長したり変化したりする生き物で・・・あんなに好きだったモノが急に嫌いになったり、あんなに嫌っていたモノを急に好きになったりするし・・・自分の体や性を意識する様な年齢であれば尚の事センシティブで・・・そのギャップで、傷ついたり傷つけたりするのは誰でも在る事。
 表現方法もつたないので、時に極端な行動に出たり。

 しかも子供だから行動の全てが論理的じゃないし、本人も見ている大人も上手く言語化出来ない。
 それを良く分かっているから、監督は言葉では無く映像で表現したというのは、作家として本当に凄い・・・。

 後半の癒やしや日常を取り戻して行くという作業は、忘れていくという行為に他ならなく・・・そこもまた、大人と違って(比較的容易に)上書きが出来てしまう子供のたくましさと同時に、残酷さが見えるんだよな。
 どこかぼやけたノスタルジックな絵作りにしているのは、そういう事なんだろう。

 少年だった事のあるオジサンには、終始観ていて辛くて辛くて・・・上手く言葉が出て来ないんだよ。
木蘭

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