ノラネコの呑んで観るシネマ

CLOSE/クロースのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
4.5
12歳のレオとレミは兄弟同然で育った幼馴染。
レオの家は忙しい花農家で、いつもレミの家でお泊まりしている。
だが中学に入って、クラスメイトから二人の距離が「近すぎる」と言われたことで、少しずつ関係が変わってくる。
距離を取ろうとするレオと、今までどおりに接したいレミ。
そんなある日、悲劇が起こる。
子供から大人へと成長する、思春期の葛藤。
おそらくレオとレミは、お互いに対する感情が違っていたのだろうが、突然の事態はレオを打ちのめす。
カメラは終始レオに張り付き離れない。
これにより、観客はレオと自己同一化する。
目線の先にいるのは、すっかり生気を失ったレミの母親だ。
事態を引き起こしたのは、無理に距離を置こうとした自分の態度。
でもレミは何も残しておらず、レオも親しかった母親は息子の選択の理由を知らない。
レオは12歳にして、あまりにも重過ぎる贖罪の意識を抱え込んでしまうのだ。
知らせなければと言う意識と、知られたくないと言う意識がぶつかり合い、いつもと変わらない日常の裏側で、ジリジリとした焦燥感がレオの心を焼き尽くしてゆく。
巧みなのは、これほど重い事態で無くとも、ほとんどの人は同じ葛藤をしたことがあるということ。
普遍性がある題材ゆえ、レオとの自己同一化が容易なのだ。
誰にでも記憶のある思春期の痛みを、静かでドラマチックな心理劇として昇華した秀作だ。
ブログ記事:
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