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CLOSE/クロースのumisodachiのレビュー・感想・評価

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
4.3



『Girl ガール』のルーカス・ドン監督の最新作。

13歳とレオとレミは近所に住む幼馴染で親友。ずっと一緒に過ごしてきた。しかし、中学校に入学するとクラスメイトに親密すぎるとからかわれ、段々とレオはレミと距離を置くように……。

『怪物』と似ていると聞いていたが、根本的に全然違う作品だと思った。「怪物」はテーマありきで構成していたが、こちらは繊細な思春期の心の揺れ自体に焦点を当てた作品で、作品の性質がまず異なると思う。

この年頃の子どもというのは成長スピードがバラバラなので、幼いころはコロコロと一緒に遊んでいたのに、徐々に(または一気に)違うグループに離れていくというのはよくある。そのときにお互いの熱量の下がり方が同じであればいいものの、ズレが生じると片方が傷つくことになる。

レオとレミも大きくいえばそういう現象なのだが、そのきっかけは他者による勝手なラベリングだった。他人の関係性を何らかの言葉で規定する必要なんてないのに、どうして皆そうしたがるんだろうね?ただ、本作については「本来は恋愛関係があるのに、他人の視線のせいで片方が頑なになった」というように明言できるようなストーリーにはなっていない。そもそも、2人の関係は他人がハッキリと決めつけられるようなものではない(思春期の入り口で色々な成長の過渡期でもあるし)。

同年代や少し年下の子どもたちの言動が妙に子どもじみて見えて、一緒に遊びたくなくなった経験が私にはある。一方で、それまで楽しく遊んでいた友達が、ある日ほかの友達の元に行ってしまって「もう遊びたくない」と言われた経験もある。成長スピードがそれぞれ違う上に、自意識過剰になる時期でもあるから難しくて、だからこそ友人関係で傷つけ合ってしまうことが多いのが思春期なのだと思う。その際、ほんの些細なことが悲劇のきっかけにもなり得るし、場合によっては取り返しがつかない事態を招く可能性があることを忘れてはいけない。

花の色や洋服の色で2人の関係性やレオの成長を表現していたことや、ほぼ演技未経験だという少年たちを活き活きと描き出した演出手法は素晴らしい。レオと兄との関係も秀逸で、あまりにも重いものを背負ってしまったレオという子どもに寄り添う存在として、兄は見事な説得力を放っていた。勝手にラベリングしてもいけないし、まだわけがわかっていない子どもを責め立てても意味はない。ただ寄り添って抱きしめてあげることこそが必要なのだと思い知らせてくれる。

予告編でずいぶんストーリーを出しちゃっているなあと思っていたが、実際は予告編の要素が終わってからが中心だった。とても美しく、ひどくビターな成長譚。
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