多湖

CLOSE/クロースの多湖のレビュー・感想・評価

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
5.0
■ 打ちひしがれてもぼろぼろになれないくらいには私は大人になっていたのだ、と気づかされた映画だ。

■ レオにとって、それは「言葉にできない」以前に「言葉にならない」であったと思う。名詞に形容詞をくっつけたら意味が広がります、なんていった言葉の用法の入口を学び始めた年端もいかない少年だ。意味を持たせた言葉は劇中にほぼ現れない。

■ それでも、“そこにたしかすぎるほどに存在し、影をおとしたもの”…それをめちゃくちゃ丁寧に描き出していた。言語表現を伴わずともこんなに焦点の定まった感情表現が可能なのかよ…、という感嘆がある。

■ 「会いたい」という一言になにもかもがすべて現れていたと思う。きっと、意図とか気持ちとか込めていなくて、ただ純粋にこぼれおちた言葉、だったんじゃないか。まだ言葉にならずままならない年端だから、意味を持たせた言葉は現れない。だからそこに表出した「会いたい」にはすごく意味が表れていた。

■ めちゃくちゃ良かった。静かな気持ちになっている、まだやるせないし悲しい。素晴らしい映画です。
多湖

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