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CLOSE/クロースのhariのネタバレレビュー・内容・結末

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

良かった。すごく好き。


思春期特有の危うさは観ていてひやひやした。異性や恋を意識し始めるあの年頃の、仲の良い二人への好奇心まじりのからかいや、いじめとじゃれ合いの狭間を行ったり来たりするようなやり取り(ロッカールームで一人の少年の背中を集団で叩く、校庭で一人を囲って腕立て伏せをさせるなど)とか。
他人との距離の測り方や、適切な距離の取り方が分からず、距離感を間違えて踏み込みすぎたり、逆に突き放して傷つけたりするところも。
ああ、この感じあるよなあ…と何度も思った。


カウンセリングの時間に、レミを少し面倒くさい感じがあると言った男の子がいたけれど、それには共感した…というか刺さった。
自分がレミに似た部分がある子供だったので。

新しい関係性を築くのが苦手で、一人の人間との濃密で深い付き合いを好むわりに、その相手に自分の本心を伝えないタイプの子供。

(レミ、レオに離れないでほしいとか一緒にいたいとは言わないまま、泣いたり不機嫌にゲームをしてみたり同じクラブにしようかなと言って相手の反応をうかがってみたり、置いていかれて怒って掴みかかったり、そういう面倒くささがある…まあ相手に自分の気持ちを伝えなかったのはレオも同じなんだけど)

1つの関係性にとことん入れ込み、それ以外の関係性を持つことが苦手で、相手にもうっすらそれを望んでしまう部分があったり。

だから、(きっかけは不本意であれ)自分との今まで通りの関係を拒絶し、新しい交友関係の中に飛び込み、別の居場所をつくったレオを見てものすごく揺らいだと思う。
レミみたいな子は「ここが自分の居場所」だと思える世界が1つしかないから、それを失ったらもう生きていける世界がなくなったも同然で。

でもそれは本当は違っていて、良くも悪くも「この人しかいない」なんてことはほとんどなく、辛い時間の先に別の誰かがいたりするのだけど。
でもそれを知るには失う痛みを味わって乗り越える経験が必要で、その過程で死を選んでしまう人はいる。子供ならなおさら。


後半はただしんどかった。親友の死で自責の念を背負うにはレオは幼すぎる…
今回のレミの死は誰かが決定的に悪いのではなく(だからこそ防ぐことができずに悲劇が起こってしまったとも言えそう)、ただタイミングというか噛み合わせというか相性というか…そういったもの絶妙に悪かった結果であるので、責任の所在を誰かに求めるのは違うと思うのだけど、でも自分がレオだったらやっぱり自分を責めてしまうと思うので、やりきれない気分になった。


振り上げた棒を下ろすことができないままレミのお母さんに抱き締められて泣くシーン、良かった。
あの棒、たぶん自分でもどうしたいか分からなかったんだろうな。ただただ怖くて仕方がなかったんだと思う。
自分を赦せなくて傷ついてボロボロで、心が壊れそうなレオの本能的な精一杯の防御姿勢という感じで本当に痛々しかった。
抱き締められたことでようやく心の再生が始まったんだろうな。


印象的なシーンがたくさんあって書ききれない。
たぶん一番好きなのはお兄さんのベッドに潜り込むシーン。
その時だけは心の防御姿勢を緩めて、レミが苦しんだか尋ねたり、会いたいと吐露したり、自分の胸の真ん中にある疑問や素直な思いをポツリとこぼす感じがよかった。
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