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CLOSE/クロースのitoのレビュー・感想・評価

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
4.7
多くを語らない、とても静かで長いお話でした。104分がこんなに長く感じられたのは初めてです。

13歳、まだ気持ちを上手く言葉にできない年頃だから理由をつけることは出来ないけれど拒絶してしまう。自分がなぜこのような態度をとってしまうのか本当は自分でも上手く理解している訳では無いのかもしれないし、拒絶された方もなぜ自分が突き放されているのか分からない。だから苦しくてどうしようもなくて、選んでしまった道はとても哀しいもので。2人とも感情のぶつけ方がとても不器用でした。

些細な一言で人の人生は変わってしまう。言った側は深く考えていないかもしれないけれど言われた側は一生心に残り続ける。ましてやまだ13歳の少年たちなんてこの関係性や思いがなんなのか上手く理解出来ていないかもしれないのに中途半端に踏み入られて消えない足跡を残されてしまった。その足跡がレオとレミの関係を壊してしまった。

あまりにも辛すぎるお話でした。思春期の少年たちの心はまだ未完成で感情の制御が効かないんだろうな。レオはきっと心と体が上手く噛み合わない子なんだと思いました。レミもだけど、なかなか外に自分の気持ちを出すことが出来ない子達なんだろう。

久しぶりにこんな気持ち感じた。あまりの衝撃で…レオはずっと分かっていたんだよね。それは1人で背負うには重すぎるもの。分かってはいるけれど言葉には出せない。どんどん不安定さが増していく。そんなレオの心情とリンクの上で繰り広げられるアイスホッケーがリンクしているような気がしました。

私もずっと苦しかったです。場面の移り変わりの緩急の差が激しくて着いていくのに必死でした。でもそれがよりレオの心のせわしなさを表現されているような気がして、とても苦しくなりました。紛らわすしか無かったのかもしれないね。

映像は色に深みがあって綺麗でした。特に光を使って撮っているシーンが多く、光に照らされた花畑がとても美しかったです。カラフルだった分、より哀しさとの対比になっていたなぁと感じました。

レミの視点は一切ないから彼がどんな気持ちで最後を迎えたのかは分からないけれど、何も分からず突き放されるなんてとても辛かったよね…幸せを祈っています。

あまりにも儚すぎる2人の姿でした。
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