社会的な弱者を描くダルデンヌ兄弟監督作品。今回も前作『その手に触れるまで』(2019年)と同様に移民を背景にした「搾取」がテーマ。
ヨーロッパで社会的な弱者を題材とするのであれば、移民は避けて通れない。これはアキ・カウリスマキ監督もそうですよね。
ダルデンヌ兄弟監督作品はケン・ローチ監督のように社会的な弱者を描くんですが、そこに批判性はないんですよ。とても客観的で安易な共感を許さない。ハンディーカメラ主体のドキュメンタリー風の作風がその客観性を際立たせています。
単なる弱者じゃなくて、ダメな弱者なんです。『ある子供』(2005年)もサンドラの週末(2014年)もそうですよね。同情はするけど、キミらもたいがいだよね……と言いたい部分もある。だからと言って搾取してはいけない。
本作の主人公であるトリとロキタも密入国者で周りから搾取されていて、とてもかわいそう。その環境から抜け出るためにお金を貯めようとする。お金を貯めなければいけない事情はとてもよくわかる。分かるゆえに「もうちょっと我慢しようよ」と思ってしまう。ダルデンヌ兄弟の登場人物って単に弱者じゃなくて人としての弱さを併せ持ってる。その弱さも含めて人間だろうと。
まあ、そうなんだけどさあ。とかなんとか色々と考えさせられる。