ノラネコの呑んで観るシネマ

クライムズ・オブ・ザ・フューチャーのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.2
人類から痛みの感覚が消えた近未来。
ヴィゴ・モーテンセンとレア・セドゥは、体の中で新たな臓器を育て、それを摘出する手術ショーを主催するアーティスト。
タイトルはクローネンバーグ最初期の中編「クライム・オブ・ザ・フューチャー」と一字違い。
リメイクではないが、世界観はなんとなく共通点がある。
彼はテクノロジーの進化が、人類の心と体にどんな変化をもたらすのかをずっと描いて来た人で「コズモポリス」あたりではその興味が「社会」の方に行っていたが、本作では再び「個人」へ回帰。
独特の内臓感覚は相変わらずで、いかがわしさ全開。
あの変なベッドとか椅子とか、どんな機能があるのか知らないけど、ほぼ現代アートやんか。
(どっちの意味でも)変態してゆく人間を見つめる目が以前より達観しているのは、齢八十の年齢ゆえか。
結局のところ、進化の流れに抗おうとしても無理だよね?って話なんだけど、この飄々とした独特の味わいはやはり唯一無二の作家性で、ファンにはたまらない。
80年代は割とメジャー系の仕事もしてたけど、歳と共にアートハウス系の原点に戻るタイプの作家なんだな。
ブログ記事:
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