ブタブタ

クライムズ・オブ・ザ・フューチャーのブタブタのレビュー・感想・評価

5.0
ラストが「エッΣ(゚д゚;)」てくらい何も解決せず投げっぱなしで終わる。
ただクローネンバーグにストーリーやオチとかそんなもの求めても意味無い。
原点回帰と共に次の段階にも入った的な、グロテスクなガジェットとクリーチャーの羅列、哲学的形而上的なテーマが全体を覆いつつ展開し見せられるのはエログログッチョグッチョな世界。
人間の進化を病理や生理化学、科学の進歩と其れが齎す負の側面から描く、やってる事は『スキャナーズ』から一貫してる。

バラードの『クラッシュ』は自動車事故を機械・テクノロジーと人間のセックスと融合であるとするポルノグラフィ、バロウズの『裸のランチ』はドラックによる幻覚が現実を侵食する、『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』はこの二作以来久々にクローネンバーグの本気映画を見たな~という喜びで感想は大勝利しかない。

オーキッドベッド(オーキッドは蘭だけどこの場合明らかに精巣(睾丸)の方だろうな)
手術モジュール、昆虫の蛹みたいなサーク(技術者が死んでもう作れないロストテクノロジーであり、まるで医学界のストラディバリウス)
このサークでの《手術解剖ショー》見るだけでもこの映画は大勝利。
ブレックファストチェアで食べる朝食は食事というより拷問。
こんなにグロテスクな生体ガジェットが大量に登場するクローネンバーグ映画は裸のランチ以来。

ジョシュ・トランク監督もまたクローネンバーグ大ファンで『ファンタスティック・フォー』をクローネンバーグ的な超能力を人間の進化における病理や変質として描きたかったらしいですが映画会社と揉めて最初の構想から似ても似つかないモノにされて大失敗映画になったのは有名。
『コブラ会』のミゲルことショロ・マリデュエナ主演のDC映画『ブルー・ビートル』がまるで「子供向けなれどまるでクローネンバーグが撮ったヒーロー映画」との評価をされているらしく、トランク監督が出来なかったクローネンバーグ的世界のヒーローを描くのに成功した?!らしいので日本でも早く公開して欲しいところ。

其れから此方にあった単館系シアターが七月で残念ながら閉館した。
いつもならこの手の作品はその映画館で上映してたろうと思うのでこっちの地方では公開するのか心配だったけど期せずして大きい映画館での上映となった。
大きい画面で見れたので満足。
無くなった単館系シアターは客のマナーがわざわざ金払って見てるのに関わらず、不思議に思う程毎回非常に悪くて(⟵まだ言ってる)思い出す度に辟易するので。
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