木蘭

クライムズ・オブ・ザ・フューチャーの木蘭のレビュー・感想・評価

3.7
 天然の肉体万歳!という話。

 今回も、スノッブで意識高い系の変態さんたちが、近未来SF風ノワール仕立てで描かれる...

んだけど、プロットが今一つでミステリーとしては弱く、どんでん返しも唐突感が否めないし、秘密が明かされてもカタルシスが無い。
 あれだ、往年のジャッロ映画みたいだ。

 ならば、映像としてのインパクトがあるのか?と言えば、今一つ。
 ボディアート系パフォーマーの様式を、定番の御大の趣味と美術のキャロル・スピアがアレンジしたビジュアル世界はパッとしないし、ガジェットのデザインには既視感があるし、それを使う必然性も感じ無い。
 解剖機の何が凄いんだか分からんし、人類は進化で痛覚を失ったハズなのに、なんで補助機械で毎晩痛みをコントロールしているんだ?
 そもそも、抗菌能力が高まったのかも知れないが、外傷は腫れたり熱を持ったりするだろ...とか、ツッコミどころ満載。

 クローネンバーグならではの、匂い立つ様なエロスとタナトスも無いし、ヤバい世界に迷い込んじまったな...という感覚には成らない。

 観終わって覚えているのは、主人公2人の肉体美だけ...
というのは、人類の意図を無視して人体は進化し続けるのだ!...という肉体賛歌としては正しいのかも。


 主人公がファンの若い女性に迫られて「古いスタイルのSEXは得意じゃ無いんだ。」と動揺するシーンとか…
ラストシーンが、「俺だって、有意義な進化をしているハズ!選ばれた人間のはず!」と思っての事なら…
歳をとった権威者の切なさを感じた。
木蘭

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