明石です

クライムズ・オブ・ザ・フューチャーの明石ですのレビュー・感想・評価

4.6
近未来。人体が進化を遂げ、痛覚やウイルスによる疾患と無縁になった世界で、新たな臓器が増えつづける新種の病にかかってしまった男が、増えすぎた臓器を切除するボディアーティストとして活躍する話。クローネンバーグ作品はまだまだ観れてない作品があるので、それらを観てからにしようと思っていたものの欲求を抑えられず、出町座へ駆け込み鑑賞。約10年のブランクを微塵も感じさせない、これぞファンの求めていたクロネン作品!と言いたい素晴らしい1作でした。

「我々は”内なる美”を求める芸術家であり、その美はいつも痛みと関係している」「手術は新たなセックスよ」という劇中の台詞通り、摘出手術(=パフォーマンス)の最中に恍惚とした表情を浮かべ、エクスタシーに達する主人公たち。JGバラード原作の『クラッシュ』しかり、オリジナル脚本の『ビデオドローム』しかり、デビュー以来、機械と人体のセクシュアルな融合を好んで描いてきたクローネンバーグが、御年80を迎えてなお現役で、しかもこんな、これまでの作品に輪をかけて変態的な作品を作り続けていることに歓喜(自作もすでにクランクアップしているとか!)。

『ロード·オブザ·リング』で有名らしい(残念ながら未鑑賞。私にとっては『悪魔のいけにえ3』の)ヴィゴ·モーテンセンは、お年を召し髪の毛が銀色に染まった今のお姿がさらにセクシーで驚いた。思えばこの人は若い頃から一度も若かったことがないような見た目と雰囲気をしていたので、彼の本来のセクシーさに年齢が追いついた感じなのかも。裏ヒロイン、クリステン·スチュワートの演技は本作の私的ハイライトでした。内に秘めた変態さを隠しきれないこのむっつりスケベならぬむっつり倒錯者な感じがたまらん。ウディアレンの『カフェ·ソサエティ』でジェシー·アイゼンバーグの運命の恋人役を演じていた頃の、あの絵本から飛び出したようなお姫様的な高貴さも好きだったけど、本作のこの地味な装いからにじみ出る変態さはもっと好き。何かを無理やり押さえつけたような抑制のきいた演技がタイプなのかも。ファンになりました。
明石です

明石です