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フォーエヴァー・ヤングのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

フォーエヴァー・ヤング(2022年製作の映画)
3.0
[パトリス・シェローと私とみんな] 60点

2022年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。英語字幕付きと書いてあったので仏Amazonで購入したら英語字幕の"え"の字もなかったので6000円も無駄にしたという因縁のある作品。パトリス・シェローが主催するアマンディエ劇場の演技学校に入学した生徒たちが『プラトーノフ』を上演するという、テデスキ自身の経験を綴った一作。ちなみに、シェローを演じるのはテデスキの元恋人ルイ・ガレル。学校自体は数年しか続かなかったようだが、その数年間はここが新人を見出す最先端の場所だったらしい。実際にテデスキの同期にはアニエス・ジャウイやヴァンサン・ペレーズなど今でも活躍する俳優たちがいる。といったように、題材からしてカンヌに向けて盛大に尻尾振っているわけだが、それにも関わらず評判は散々で審査員からもガン無視という結果に終わった。閑話休題、本作品は演劇学校のオーディションで幕を開ける。才能があり裕福でナイーブなステラは、演技をする理由について"若さを無駄にしてると思ったから"と回答する。これは後に上演することになる『プラトーノフ』について、シェローの"若さに固執する若者たちが登場人物だ"なる言葉や、公演直前にブチギレた言葉と結び付いているのだろう(潜在的にシェローの教えに最も近かったという意思表示か?)。やがて、ややテンプレ気味だが個性的な12人のメンバーと共にレッスンを開始したステラは、ヤク中のエティエンヌと付き合い始める。同期メンバーとのワイワイ風景は、そのままシェローが後に言うように瑞々しく、逆にエティエンヌとの破滅的な恋愛はジョアンナ・ホッグ『The Souvenir』のそれとほぼ同じである。というように、取り立てて褒めるような部分も貶すような部分もない映画だった。甘ったるいノルタルジーの映画という印象。

ヴァンサン・ランドンとサンドリーヌ・キベルランの娘というガチセレブという点でテデスキとも似ているシュザンヌ・ランドンが『恋は光』の伊東蒼みたいな出方してて笑った。ランドンは不合格だったので劇場近くのカフェで働いているという設定の名もなきウェイトレス役である。なんたる皮肉。

・追記
これで2022年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品は全て観終わった。この年はSCREEN誌の星取もかなり低めで、それは正しいと思った(必ずしも星取の評価と私の評価が一致している訳では無いのだが)。結果としてはクリスティアン・ムンジウ『R.M.N.』とキリル・セレブレニコフ『チャイコフスキーの妻』が一番好きだったという身内贔屓…ってフレモーと一緒じゃねえか!!以下、私的受賞結果。

パルムドール:『チャイコフスキーの妻』
グランプリ:『R.M.N.』
監督賞:タリク・サレー(『Boy from Heaven』)
女優賞:タラネ・アリドゥスティ(『Leila's Brothers』)
男優賞:ブノワ・マジメル(『パシフィクション』)
脚本賞:『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』
審査員賞:『EO イーオー』
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