コーディー

聖地には蜘蛛が巣を張るのコーディーのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
4.2
敬虔が狂信に振り切る時、人も社会も法の外にある歪んだ正義を正当化してしまう…
娼婦ばかりを標的にした連続殺人事件の闇に浮かび上がるシリアルキラーの素顔。ごく普通の人間を怪物に変えてしまう、暴力より遥かに恐ろしい聖なる憎しみ〝浄化〟に打ちのめされた。凄い!

捜査に力を入れない警察や殺人を擁護するような空気感を通して捉える社会構造、制限される女性の権利。
そこに挑んでいくジャーナリスト.ラヒミの怒りや体を張った取材が緊張感と遣る瀬なさを充満させるし、彼女が不快や根深い闇を目の当たりにする程に身の毛がよだつ。アリ・アッバシ監督やっぱ見事!

異常な連続殺人を犯す人間の精神は果たして異常なのか、家族との関係性を通してその境界を照らしていく…
殺人鬼の得体が知れてしまう恐さや向こう側の人間なんだと納得もできない。そんな踏み込んだ洞察に戦慄しながらも余りにも淡々と歪みを見せられると麻痺してくるし〜けど刺激的w

映画のモデルとなった殺人鬼サイード・ハナイの動機とか言葉とか見てるとやっぱ狂ってるな。映画で描かれてるより更にエゲツない犯行もあったみたいやし…
てか今んとこ今年イチ厭〜なラストカットやったな。
割と評判悪めな監督の前作『ボーダー』も好きやけど、更に新作が楽しみな監督になった。