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聖地には蜘蛛が巣を張るのmitzのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
3.0
イランの聖地マシュハドで実際に起きた娼婦連続殺人事件を題材とした社会派サスペンスです。
帰還兵として一般社会に紛れ込み家族と平穏な生活を送るサイコキラー サイードとそれを追う女性ジャーナリスト ラヒミ。
新聞社に「街を浄化する」と犯行声明を送り、犯行を繰り返すサイードとそれを英雄視する一部の市民たち。その殺害シーンはサイードの娼婦たちを蔑む残虐さがとてもスリリングです。
犯人探しの要素は少なく、中盤からは捕まったサイードを社会がどう裁くのか、が焦点です。16人も殺害しながら贖罪の意識はなく、裁判では家族にすら擁護される異質な倫理観。
宗教国家の背景にある歪みと女性蔑視的な文化など、不完全で不純な法治国家のヒリヒリとした実情をノンフィクションの如くラストシーンまで克明に描かれています。
ただ「個」としての人物描写が乏しく、娼婦に執着するサイードの行動原理などが掴み切れず娯楽性には欠けますが、パルムドールにノミネートされるほど社会風刺としては意義のある作品です。

個人的には、名もない娼婦をメインにしたポスターとその邦題は素晴らしいと思います。
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