六四二

聖地には蜘蛛が巣を張るの六四二のレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
3.6
イランに道徳警察という風紀委員的な存在があることに驚く。まじめな国民性なのだ。
この国で女性のベールをめぐる事件の抗議運動が起こっている。イランにおける性差別の習慣を変えようとする動きの中での本作公開である。もちろんイラン映画ではない。
一人の男が16人の街娼を殺害した実際の事件を元に描いている。酷い話だと思う。しかし男の行動を賞賛する人達が少なくないと映画は伝えるがそれもわかる。
仮に、殺された16人が詐欺集団、窃盗団、麻薬組織、性犯罪者、マルチなら...と考える。
この男には家庭があり息子と娘がいた。父が子らに教えたあることを、息子がインタビュー動画で答える。子供らしい純真さに満ちており、一見微笑ましい動画だがおそらく作者が最も伝えたいものが映っている。
日本なら「水に流す」というスピリットが先達の教えとして身に染みている。言い方を変えれば諦観といえるが、おだやかに日々を過ごすための考え方だ。
イランでは「水に流す」のと逆に憎悪をジリジリと煮詰め、濃縮させて徹底的にやるのがスピリットとして根底にあるのではないか。
この事件を暴くジャーナリストの女が正義感では説明のつかない行動。まさに死者に鞭打つのを見てそう思った。
六四二

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