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聖地には蜘蛛が巣を張るのkazuoのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
4.0
イランで実際に起きた娼婦連続殺人事件をモチーフにした作品。
娼婦、殺人鬼、女性記者、これらの視点から描かれた物語はある問題を浮き彫りにする…

以下ネタバレあり

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この作品はイランが舞台で、その根底にある問題とは女性蔑視。序盤の女性記者のホテルのチェックインにおける、予約したのに独身女性が1人での宿泊とわかるとシステムエラーを理由に宿泊を断る男性従業員の対応が象徴的で、この物語のコアを示している。

この作品は冒頭で殺害される当日の娼婦の夜の様子が描かれている。そこには子供を愛する1人の母親としての姿も描かれている。

そして連続殺人犯の日常も描かれているが、彼は敬虔で家庭的な人物で妻と子供2人がいて仕事は解体業。若い頃にはイラン・イラク戦争で兵士として神、そして国に尽くしてきた。そんな彼は今の自分に納得していない。自分には何か重要な役割があるはずだ、そんな強度はあるけど意味がない状態。故に意味を欲し、神からの使命として娼婦を殺害して行く。

犯人逮捕後、ある層から穢れを駆除する存在として英雄視される。そして彼自身も裁判では罪の意識がなく雄弁に語る。その姿を見た息子が、父の思想を踏襲する。

それぞれの登場人物のパーソナルを描きながら社会にアプローチした良作。
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