コブラ

聖地には蜘蛛が巣を張るのコブラのネタバレレビュー・内容・結末

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

「コレは異世界モノでも、中世の話でも、近未来ディストピアSFでもないからな?」というメッセージ•フロム•ムスリマ(アリ•アッバシ経由)


イランで起きた娼婦連続殺人事件、通称「スパイダーキラー」事件を扱った実録犯罪モノであり、「ボーダー」のアリ•アッバシ監督作品という事で必修科目。


16人もの女性を殺害した類のないサイコパスの存在、宗教都市におけるセックスワーカーやドラッグディールの存在、保守メディアや街の人々がこの事件に喝采を浴びせたという事実、中東イスラム社会に於ける女性の地位。
この映画が浮かび上がらせたイランに取っての不都合な真実の数々に、当然にご当地撮影は不可。イランよそういうとこだぞ?

女性ジャーナリストが犯人を追い詰める前半は「羊たちの沈黙」近似のサスペンスと思って観てたけど、犯人は脳筋のガバガバ犯罪プランナーだもんで、物語中頃に割とあっさりお縄。クライマックス早くねーか?、と思ってたら映画の核たる部分は逮捕後の法廷劇、そして顛末でして。

神の名のもと正しい事をしたと疑わない殺人鬼と、それを英雄視する市井の人々、そして“加害者”家族。姦通罪で死刑とかになっちゃう国だ、女性を買う側の存在には一瞥もせず殺された娼婦達を叩きに叩く。犯人はちゃんと死刑になるが、被害者に寄り添った判決ではなく無神論者にはマジで理解できない政治的司法判断によって吊るされる。全くもってスッキリしない。てかかなり胸糞。

主役の女性ジャーナリストを演じた俳優さんはとあるスキャンダルでイランからフランスに亡命したんだと。この映画でも目を覆いたくなる扱いをチンコ共から受けていて、彼の国ではそれが日常であるかの様に描かれている。もちろん全員が全員こんな奴らの筈はないし、劇中でも彼女を支える同僚の男性ジャーナリストもいる。が、やはりイスラム社会においては顕在化しやすい土壌はあるんだろうな、とは思う。

ただこれをボーダーの向こうの話と傍観キメテていられる程の先進性はうちの国にはないし、西側(ってか基督教圏)でも怪しいところ。

それを忘れてはならぬ。ならぬぞ。


なんにせよ劇場で観られて良かった。自宅だと逃げ場あり過ぎて最後まで観られたかどうか、、、。
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