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聖地には蜘蛛が巣を張るのクリームのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
4.1
祖国イランから亡命し活動するアリ·アバッシ監督。 同じくイランを離れフランスに拠点を置くザーラ·アミール·エブラヒミが主演。2人ともに思う所があるのだろう。イスラム教絡みの作品は、女性が虐げられ、ムカムカして終わる事が多いのだが、これはちゃんとスッキリします。でもそれで終わらせない。やっぱりこの監督面白い。凄く、好みの作品。
イランで実在の殺人鬼サイード·ハナイによる娼婦連続殺人事件に着想を得ています。

2000年代初頭。イランの聖地マシュハドで、娼婦を狙った連続殺人事件が発生。スパイダー·キラーと呼ばれる殺人鬼は、街を浄化するという理由で犯行を繰り返し、住民たちは震撼するが、一部の人々は犯人を英雄視する。真相を追う女性ジャーナリストのラヒミは、事件を隠蔽しようとする圧力に屈せず、取材を進めて行くのでした。



ネタバレ↓



マシュハドは、シーア派イランの心臓部と呼ばれるモスク「イマーム·レザー廟」がある為、参拝者が多く信仰の街と言う顔を持つ。
ジャーナリストのラヒミは、自分が囮になり、サイードを誘い殺されそうになります。危機一髪を相棒のジャーナリストが通報して、サイードは逮捕された。彼は、街を保護する為に社会を汚す娼婦を罰していて、正しい事をしていると言います。聖戦だと…💢
恐ろしいのは、街の住人も家族も同じ考えで、サイードを英雄扱い。
結局、殺人なので死刑になりますが、裏でサイードは検察側から「刑執行前に逃がすから」と言われ、鞭打ちもやっているふりで済ませました。
しかし、実際に絞首刑は行われました。サイードは、裏切られ切り捨てられました。縄に首を通された時の恐怖の表情をしっかり映します。ス·テ·キ。
で、ここで終わりません。
ジャーナリストが、サイードの長男にインタビューします。サイードの息子が幼い妹を使って殺しの方法を模擬実演してみせます。自分が父の後を継ぐと言わんばかりに…。
イヤあ、面白かったです。

終始女性蔑視ストーリーが続き、中々の胸糞なのですが、驚くのは、男性のみならず一部の女性は、男性サイドに付きます。サイードの妻は女性なのに夫のしている殺しは正しいと言います。被害者の母も娼婦の娘を悪く言います。聖戦と言い、本当にいつもならヘドが出るストーリーだけで終わりますが、ちゃんと裏切りと言う形で助かる予定の土壇場でサイードに死を突き付け、死刑にしてくれます。
更には息子が父のした事を正しいと信じ、後継者になるであろう終わり方。最高のENDでした。面白かったです。
糞ヤロウをちゃんと裁き、でも現実的には息子の様な存在が育っていて無くならない問題だと言う現実のバランスが良い。私は、この監督好きだわ。他の2作品も好き。

そう言えば、死体役が上手いのか、撮り方が上手いのか死体になる瞬間がリアルに観えた。全員だったけら、撮り方だな。多分。
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