けんくり

聖地には蜘蛛が巣を張るのけんくりのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
4.0
「蜘蛛が巣を張る」…秀逸な邦題。ただイランの話に留まらず、蜘蛛が這い回る文明社会の根深い闇を描いた骨太スリラー。

誰しもその大小はあれど、社会への不満だったり、自身の境遇に対するコンプレックスを抱えていると思う。

そうした不満が、「こうあるべきだ」の理想に変わり、それを正当化するものがあれば、人間は野蛮な行為すらも平気で犯してしまうのかもしれない。

凄く抽象的に捉えると、ヨーロッパ諸国からISISに集まってくる、移民2世3世たちも同じような構図だと思う。

本作は連続殺人鬼の話だけど、いわゆるサイコパスの話ではない。家族を持ち、人を愛することができる平凡な人間の話。我々とそう変わらないのかもしれない。

だから本作で得られる教訓は、「娼婦」とか「異教徒」とか、カテゴライズするんじゃなくて、もっと1人1人を自分と同じ「人間」として見ることが大事だということ。