幽斎

パラレル 多次元世界の幽斎のレビュー・感想・評価

パラレル 多次元世界(2018年製作の映画)
4.0
アメリカの有名映画評論サイト「Rotten Tomatoes」82%の高評価!必死に宣伝する詐欺ジャケ写とタイトルで悪名高いアメイジングD.C.の努力が涙ぐましい(笑)、私が余り取り上げないジャンルSFスリラー。AmazonPrimeVideoで鑑賞。

ロッテントマトは日本でも有名に成りましたが、自作自演も有るので素直に鵜呑みには出来ない。本作はTomatometerは確かに82%だが、肝心のAudience Scoreは44%。つまり本音と建て前が違う。評価者と観客のズレも指摘されるが、一般の率直な感想と、評論家の感性とのギャップが著しい。私は他人の批評は全く信用しない。

本作には意識高い系が褒める理由が有る、Isaac Ezban監督。デビュー作「メキシコ・オブ・デス」ホラー映画と思いきや、スプラッター、スラッシャーが三度の飯より好き、以外は観てはイケない。監督自ら書いた「パラドクス」タイムループの最高傑作と私が絶賛した超高難易度スリラー。続く「ダークレイン」賛否両論で観客は意味不明、しかし批評家は褒めちぎる。トマトは映画通を唸らせれば「勝ち」なのです。

本作も基本的に「パラドクス」同じタイムループにシチュエーションを付け加えた。パラドクスはSFと言う概念で考察すれば謎が解ける仕様ですが、本作は分かり易く時間軸を予め現世で1分、パラレルワールドで3時間と設定。監督は「ダークレイン」同じく「人の業」テーマに映画を創る。貴方は誰かを傷つける恐れが有るが、使えば必ず儲かるデバイスが目の前に有ったら、使いますか?。

人の欲とは「チョットだけよ」誘惑に負けて結果的にロスを産むが、ギャンブルでも借金でも薬物でも同じなのだろう。私はギャンブルや借金や薬物は、一度も経験が有りません、必ず「損」するから(笑)。背負う債務は雪だるま式に膨張する事が予見できるのに、人は自ら破滅の道を選ぶ。闇バイトとか絶対捕まる事は誰でも想像できる筈。

パラレルワールドは日本の造語で正しくはParallel Universe、本編の台詞も同じで並行宇宙と言う概念。理論物理学の世界で「量子力学の多世界」広くシュレディンガーの方程式で有名。皆さんも一次元、二次元、私達の住む三次元、そして四次元の世界は耳にされた事が有るでしょう。本作も「またパラレルワールドかよ」と言われそうですが、Parallel Universeとは「似て非なる世界」ですが、主人公と同一人物が別次元に居る作品が殆ど。本作は別次元の要素を自分の次元で運用する方法を模索する点が新しく、単なる二番煎じでは無い点を観客が理解出来るか?に委ねられてる。

入口が「鏡」と言うのはホラー映画の引用ですが、初めは律儀にパラレルワールドの時間の流れが遅い事を利用して、本題であるアプリ開発を短縮するのはマジメだなと感心したが、別次元の自分の金を盗む。うん、良いアイデアと褒める訳にはイカない。別次元でも人の金を盗むのは犯罪、しかし別次元の自分のモノは俺のモノと言う矛盾こそパラドクス。パラレルワールドの俺は自分と同一の存在なのか?。私は違うと思います。自己矛盾に陥れば後は仲間割れと容易に予見できる。

脚本はScott Blaszak。私も全く知らない無名の人。調べたらラジオ番組の作家らしいが、監督が途中まで書いたが、行き詰って知り合いにブン投げたとしか思えない。しかし、ラストに素晴らしい見所が用意された。SFスリラーと思いきやスプラッター、スラッシャーが三度の飯よりも好き、以外は観てはイケない気合MAXのグロ描写。京都で「牛モツ」と言えば「こてっちゃん」一択ですが、色んな意味で最後にヤッてくれたよ(笑)。

本作が高く評価されるのはグロではなく、頭の中で描いたプロットを実際に映像化する事は限られた人に与えられた才能。ソレを世間では監督と言うが、本作は「パラドクス」「ダークレイン」同様に極めてハイレベル。私は他人様を「頭が良いな」と褒める事は滅多に無いが、この監督の才能は凄い。問題は観客が着いて来れるかだが?(笑)。

「1」を手に入れれば人は「10」欲しく為る。欲望とは「鏡」の様だと痛感させられた。
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