セガール幹事長代理

パラレル 多次元世界のセガール幹事長代理のレビュー・感想・評価

パラレル 多次元世界(2018年製作の映画)
3.5
生活に苦しむ商用アプリ開発者達。偶然見つけた異世界へアクセスできる鏡を駆使し、色んなものを盗んで金持ちになろうとするが、物事はそんなに簡単に進まない話。

どこをどう間違えればこの面白い話からここまでだっさいジャケットが出来上がるのか理解に苦しみます。

よくあるタイムパラドクスものと違って、異世界でどんなに好き勝手しようが現実世界に一切影響が無いのは面白いし、なかなか夢のある世界だ。「自分がよければすべてよし」的な現代人的考え方を徹底的に批判するわけでもなく、寄り添うわけでもなく、ちゅうぶらりんな感じで物語が進むのも心地よい。廃棄に金かかるゴミとか異世界に放り投げて、ちゃんちゃんってなる世界線は羨ましいこと山の如し。
個人的な話で申し訳ないんだけど、この映画観た翌日に「食品ロス対策」の概要みたいなのを説明する場に何故か出席することになって、食料は世界的に値上がりしてる~、食糧生産のインフラが~、人類自身が招いた結果なんですよ~、とか偉そうなことを神様目線で喋ってきたばっかりだったので、我ながら適当な人間だなと深く自覚した次第です。
みんな外食では食べきり、持ち帰りに努めよう!

本作は「夢」の話そのもので、即ち我々パンピーにも経験あると思うが、睡眠における「夢」の中で「これは夢」だと認識した瞬間(俗に言う明晰夢)やりたい放題、人に言えない欲望を夢の世界で実現させたことが一度はあるだろう。
途中で目覚めてしまった時の切なさといったら筆舌に尽くしがたいものだし、その世界と再開したくて二度寝しても同じ夢とはもう出会えないし、そもそも平日の朝に二度寝できる環境にある人の方が少ないだろう(私はちゃんと働いてないので出来てしまうが)
そういった現実→夢→現実→夢の繰り返しを大の大人が誠実に、本気で、わかりやすく描こうとした、という真摯な態度が伝わって参りました。

一方で、このわかりやすさが完全に仇になったことも否めず、監督の前作に「パラドクス」「ダークレイン」っていう同じくタイムパラドクス的な作品があるんですが、そっちは尖りすぎてて、はっきりいって4回ぐらい観ても意味がわからないのです。「俺の知略と独創性についてこれるやつだけ観ればいい」ぐらいの攻撃性があり、むしろそれが魅力だったんですが、本作においては何かを思い直したのか、そんな毒っ気が綺麗さっぱり抜かれております。マイルドすぎて全然カレー食ってる気がしない感じです。完全に病院食。

次回作に期待です。