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あちらにいる鬼のnanaのレビュー・感想・評価

あちらにいる鬼(2022年製作の映画)
3.5

報知映画賞ノミネート作品

瀬戸内寂聴さんと作家の井上光晴の不倫を元に書かれた井上荒野さん原作のラブストーリー。
井上荒野さんは井上光晴さんの実子だそうです。

豊川悦司さん、寺島しのぶさん、広末涼子さんがこの作品の主軸を演じている。
人の業のようなものがこれでもか、と出てくる。


結局この3人は途中まで(ミハルに逃げられるまで)この関係が好きなんじゃないかと思った。

この作品は、一方的に男が悪い!という意見もあるけれど、この関係から脱却しようとしたのはミハルだけ。
不倫相手の女が出家するという極端なやり方で抜けるまで延々続いた三角関係。

奥さんは仕事の能力も多分あり、近い人達からはその能力を絶賛されながらも夫の影となり、自立しようとはしない。
ただ耐え忍ぶ妻のように見えてこれが彼女の美学でありプライドのように思えた。
白木は元々こういう男なのだろうけど、この奥さんの態度によって3人の関係が均衡を保ち、不満がありながらも媚薬のスパイスのように絶とうとしない。

辛そうなシーンがたくさん出てくるが、不倫体質の人というのは本当にいて、私などは面倒臭い事が大嫌いなので到底出来ないが、そのツンと来る辛さも掻きむしるような悪意も全部含めてそこにどっぷりとハマっているので好きにして!と映画で観るくらいで丁度いい。

モテモテ白木先生を演じる豊川悦司さんの色気と悪気の無さが本当に良くハマっていてとても良かった。
前半に出てくるペットのような高良健吾。
この存在がミハルの根本を表しているようでこの辺りまでなら私もしてみたい。

抑えた中の強さ
この三人を演じたキャストがどの役もピッタリで、まさにこの人達の向こう側にいる「鬼」を感じさせた。



~~~~~舞台挨拶~~~~~


廣木隆一監督
タイトルに鬼とあるがどちら側が鬼かは観てもらって感じる事。
俺は観てる(芝居を)だけ。
芝居の間が凄く面白い。3人の芝居の面白さを撮らなきゃ、と思った。


寺島しのぶさん
人と人との縁、死ぬまでに絡んでいく事は尊くて愛おしい。
どう思うかは人それぞれ。いろんな方に観て欲しい。
本当に剃髪をした。監督も剃髪しているようなものなので(笑)。剃ってよかった。
カツラでは心の動きが違ったと思う。
役者に与えられるのは台本だけ。豊川さんと丁寧に組み立てて飛び込んで行った。
刺激的だった。
白木役は豊川さんじゃなかったら日本の俳優さんではやれる人はいない。


豊川悦司さん
「あちらにいる女優」(笑)2人の間を行き来して撮った。
コロナでクランクインまで時間がかかった作品。
凄く早いペースで撮った映画。
充実した1ヶ月を過してそれがスクリーンに焼き付いている。
寺島さんはとっても男前の人。絶対剃髪すると思った。
廣木組は3回目。とても好きな監督。俳優のやりたい事を切り抜いてくれる。
白木は申し訳ないとは思ってなかったと思う。


広末涼子さん
素敵な映画で圧倒された。
寺島さんは謙虚で控えめな方。肉体的にも精神的にも辛い撮影をされて凄いと思った。
キャストの大変な撮影が集約された見応えのある作品。
あるシーンでは寺島さんが子供のように見えて泣いてしまった。
怒りたくても怒れない魅力のある男はいる。



瀬尾まなほさんが寂聴さんと観れなかった事が残念とメッセージ。
3人は同じ墓地で眠っているそうです。
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