HAL8192

ゴールデンカムイのHAL8192のレビュー・感想・評価

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)
3.9
理想的実写化……ただし、序章のみ

人気漫画のゴールデンカムイの実写化作品。
原作は非常に人気が高く、累計2700万部以上を誇る漫画作品。30巻以上に続く長期連載を近年見頃に完結した。

そんな作品の実写化なので、良くも悪くも注目度が高く、ファンからはちゃんと実写化できるのか? という不安の声もあった。

個人的にも原作を読んでいたので、これを今の日本映画界にちゃんと実写化出来る体力と脚本を書けるのか不安ではあったが、しっかり仕上げてきた印象。

作品そのものが分かりやすいアクション作品ではなく、アイヌ文化やグルメ・パロディといった多方面のジャンルを掛け合わせた「ごっちゃ煮」な作品なので、脚本が大きく変えられ、日本特有の嫌なラブロマンスに変わっているのでは……という懸念もあったが、割と見やすくまとまっていた。

しかしどうしても全30巻以上の長編作品ゆえに、一作ではまとめきれず、原作の約3巻分のエピソードをコンパクトに映画にしている。正直この段階は序章に過ぎず、まだキャラクター紹介の段階。

明らかに続編を匂わせた内容で終わっているため、ここだけは明らかな注意点。

ただ真面目に映画化をするならこうするのが一番なのはわかるので、続編がちゃんと撮影されるなら文句はない。

主人公の杉本をあの山崎賢人が演じると聞いた時は演技力はともかく、元軍人で、不死身の男と言われるような体格と肉体美は再現できるのか、やや心配だったが、かなり良かった。肉体の仕上がりも良かったし、彼の持つ素朴で優しい面が見てとれた。

同時に二つ名の「不死身」っぷりの表現、主人公として危険に飛び込み、それでいて絶対に死なない化け物のような男という二面性がちゃんと画として表現されていたので、本当に良かった。

アイヌのヒロインというか、相方の少女「アシリパ」さんも頑張っていた。どうしても、血筋のルーツがややこしいキャラクターなので実写化にあたって色々言われており、原作からの年齢引き上げもあったので、観る前は気になっていたが割と杞憂だった。

変顔含め、演技も上手いので十分に満足。
まあ子役を使用しても何年にも渡る長期シリーズの撮影になった場合、劇中と実際の時間の流れの差が顕著になるだけなので、実写化にあたっては仕方ないポイントだろう。

俳優のアイヌの血云々の指摘は現実的ではなく、今回の配役そのものには文句はない。
アイヌ文化的な問題は、小道具や実際のセットの出来栄えが解決してくれた。ここにアイヌのスタッフが美術監修や作成に入ったという本作の姿勢は、真摯なアプローチだと評価したい。

それとコメディリリーフとしての白石は最高だった! あの三枚目感は完全に白石だったので、マジで良い。完成度が高い。

他のキャラクターはどうしても序盤なので、まだそこまでは目立ってはいないが、役者の配役は良かったと思う。鶴見役の玉木宏は必見。重要キャラの谷垣や尾形はまあ、今後に期待といったところ。

映像面も全体を通し、ロケーションの仕上がりも良く、辺り一面の雪景色での撮影は非常にリアリティがあった。カムイとしての熊の恐ろしさも十分に表現できていたのもポイント高い! グロ表現もカメラワークの使い方で、結構激しい演出をしていたのも好感が持てる。

問題点は本当に、映画の尺!!
今の段階では、12話のドラマシリーズの1話しか見ないで、評価を判断するようなものなので続編に期待! 

今後さらに登場する変人奇人集団の織りなすゴールデンカムイ劇場を、ぜひ期待したい始まりの映画だった。
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