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ゴールデンカムイのYAEPINのレビュー・感想・評価

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)
4.4
原作を読んでいたある日、「高橋一生こそ、尾形役をやる為に生まれてきた人物なのでは?」という思い立ち、それに乗じて理想の『ゴールデンカムイ』実写版キャストリストというキモいメモを作っていたが、本作のキャスト陣が発表されてことごとく打ち砕かれた。
杉本をどうしても長瀬智也にやって欲しいなど、とんでもない時代錯誤なのだ。

結局誰一人として当てられなった訳だが、本作の役者たちは素晴らしかった。
特に鶴見中尉演じる玉木宏には度肝を抜かれた。日本中を虜にしたあの千秋先輩と同一人物なのか??

そして本作が絶賛されているのは山﨑賢人と山田杏奈の演技、そしてそれを超えた人間力にあると思う。
2人とも真摯な眼差しを持ち、原作のトレースだけでない、独自の魅力を持っていた。

また、VFXが思いのほか迫力満点だった。
正直ヒグマとか全然期待していなかったが、最近の熊被害のニュースも想起させるほど一番の恐ろしい映像だった。絶対に遭遇したくないし、出会った瞬間走馬灯を見そうだ。
レタㇻも実写と見紛う質感で、あれほど人間と近づけて、よく見劣りしない造形になっていたと驚く。

全体的に、見せるものと見せないものの配分が良かったのだと思う。
実際にロケをした北海道の大地は余すことなく雄大に見せ、二百三高地などの戦闘シーンはスモークを焚きまくって視野を狭くする工夫がされていた。
それにしては顔面ドアップのカメラ目線が多すぎるが、ギリギリ目をつぶれる。

もちろん原作の力ありきでありつつ、これだけのアイヌ文化を映像で見られたことにも感無量だ。
アットゥシの装飾も非常に美しかった。
欲を言えば、もう少しアイヌ音楽を流して欲しかった。
文字を持たない民族であるだけに、口頭伝承が数多くアーカイブされているはずなので、あの独特な発音と精神世界をもっと聴いてみたかった。

ただ、いくら前評判で聞いていたとはいえ、さすがに序盤も序盤で終わってしまった感は否めない。
この調子だとあと6作は必要な気がするが大丈夫なのだろうか。
幸い評判が良いようで、私が観た回もほぼ満員だったが、これがヒットしなかったら続編が出せないというリスクを抱えていると思うと恐ろしい。
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