スカポンタンバイク

インランド・エンパイアのスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

インランド・エンパイア(2006年製作の映画)
4.2
重い腰を起こして、ようやく観た。

「マルホランド・ドライブ」を観ていたので相当覚悟はしていたが、あれ以上に混沌としていた。寧ろ、これを観た後だから言えるが、これに比べれば「マルホランド・ドライブ」は構成的に分かりやすく作っていた。「インランド・エンパイア」は本当にわからない。
「インランド・エンパイア」はintroductionによるとDAVIDLYNCH.COM用に撮った映像がきっかけで、その後ローラ・ダーンのために70分の映像を撮り、その後全体の脚本を書かずに好きなシーンを思いついてはロサンゼルスとポーランドで撮る、思いついては撮るを繰り返してできた作品という事で、「マルホランド・ドライブ」を発展させた映画になっている事がわかった。
それは映画を観ているとよくわかる。ローラ・ダーンの話自体は観てると結構分かって、仕事がほとんど来なくなっている女優にいわくつきの不倫ものの映画企画が舞い込んできて、主演男優と恋愛になっていくにつれて、役と本人の区別がどんどんなくなっていくという感じだろう。ただ、分からないのは、ポーランドで売春をやらされてるロストガールのエピソードが並行して出てきて、ローラ・ダーンの話とリンクしていく所だ。話構造としては、今正にローラダーンが撮影してる映画をロストガールは観ており、ローラ・ダーンが撮影が進むにつれて自分の深層心理に入っていき、内なるファントムを倒す事で、それがロストガールにリンクして、ロストガールは旦那と息子に再会するという感じ、だと思う。しかし、その間に入ってくるリンチ的ビジョンや1人の俳優が2つの役回りを演じていたりなどがあって、全てのシーンを観てる間にそれらの繋がりを読み解くのは、ほぼ不可能。意味不明としか言いようがない。
ただ、一つ一つがシーンとして魅せてくるため、意味が分からなくても観れてしまう。これは、私が敬愛してやまないPTAの「ザ・マスター」にも同じ事が言える。ここがやっぱり、デイヴィッド・リンチが唯一無二と言わせる所だなぁと改めて思った。
個人的には「マルホランド・ドライブ」の方が好きだったが、1つのリンチ体験として、これは薦めたい。