パン

インランド・エンパイアのパンのレビュー・感想・評価

インランド・エンパイア(2006年製作の映画)
4.2
デイヴィッド・リンチ監督史上最難関クラスの難解映画。
最初の1時間くらいがめっちゃ面白い。
いつものリンチ節炸裂って感じで。

ただ序盤で張られる数々のセリフや伏線の意味が最後まで観ても全部スッキリしなかったというのが正直な感想だ。
マルホランドドライブやロストハイウェイ同様に何度か観ないとこの映画の真の評価は難しいように思う。

自分は冒頭に出てくるあの気味の悪いウサギのビデオの時点でもう勝手に鳥肌立ってた。やっぱこういう演出とか不気味な絵作りが上手いよなあ。
この映画は序盤の会話やカメラワークからして既に不自然。
素人のホームビデオのような粗くて雑なショット…
不気味な来訪者のおばさんが意味ありげに「行動には結果が伴うの」とか言ってくる。

虚構と現実の境界が曖昧な感じの映像作品が大好きなんだけどこれもめっちゃツボだったな。
映画の中で女優が映画の役を演じる…そして段々と現実の自分と役柄の自分の区別がつかなくなる。
「女の人生って役を演じる女優みたいなものだよね」みたいなメッセージ性も感じた。
序盤に出てくる人影の正体は俺の予想通りだったからちょっと見てて気持ち良かった。あそこの演出もゾクっとするんだよな。


「何故自ら苦しむ?」というセリフからもわかるようにこの映画は自分自身の内面を映し出す鏡のようだと思う。
自分で悩んで自殺するなんて生き物は哺乳類で人間くらいなものだろう。

インランドエンパイア(内なる帝国)というタイトルも自分自身の内面や精神を指してると思う。
自分の内面に向け訴えかけ電話を発信すると何故かウサギ人間たちがいる部屋に繋がる。
これはウサギ人間たちが人間を支配してるとも管理してるとも言える。
そしてこの空間は異なる世界を繋ぐ架け橋のような役割も担っているように思えた。

この映画は序盤と終盤のみ現実、それ以外はイメージや想像の映像だと解釈すればある程度理解出来ると思う。
それでも意味不明な部分が山ほどあるが…

あと映像が暗すぎて若干わかりにくいのもある。
リンチ監督はこれすら狙ってそうだが。
ラストのダンスシーン含めこの作品には女性賛歌のような意味も込められてるように思う。
それこそマルホランドドライブの時も同じこと思ったが。
あっちのほうが100倍わかりやすい映画だったな。

長いし難しいし面白くないと散々な評価の映画だが、リンチ監督や難解映画が好きな人は是非観て欲しい。   
俺もいつかもう一度挑戦しよう。
パン

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