流浪の月
監督/李 相日
悪人(10)原作/吉田修一 妻夫木聡、深津絵里が出演した映画。
怒(16)原作/吉田修一 房総、東京、沖縄を舞台に、殺人犯の疑いをかけられる3人の男たち。広瀬すずも出演。
出演/
広瀬すず
ちはやふる(16-18)
四月は君の嘘(16)
怒り(16)
チアダン(17)
三度目の殺人(17)
先生 好きになってもいいですか?(17)
ラプラスの魔女(18)
一度死んでみた(20)
新解釈三国志(20)
いのちの停車場(21)
松坂桃李
戦隊シリーズ シンケンジャー(08)
ツナグ(12)
ガッチャマン(13)
不能犯(18)
娼年(18)
孤狼の血(18)
居眠り磐音(いねむりいわね)(19)
あの頃(21)
いのちの停車場(21)
空白(21)
年 秋 耳をすませば が待機
横浜流星
きみの瞳が問いかけている (20)
あなたの番です 劇場版(21)
嘘喰い(22)
アキラとあきら(22 8月)
線は僕を描く(22予定)
両親を失った大学生が水墨画と出会い没入していく
多部未華子
白鳥玉季(更紗の年少役)
内田也哉子
柄本明
鑑賞ポイント
1)松坂桃李、広瀬すずの演技に注目
一人の主人公 文を演じた松坂桃李。
劇中ほとんどで淡々とかつ黙々と語り、そして無機質であり つつも、どこか優しくも悲しいと言う 悲哀を醸し出す素晴らしく演技を見せてくれる。
2)撮影/ホン・ギョンピョが切り出す
水と月のカットたち
3)世間の事件や報道への
見方を考えさせられる展開
演技派の若手俳優3人の見事な演技を見せてくれる完成度の高い映画
広瀬すずは繊細で他人との関係性を上辺だけ合わせる年頃の女性を見事に演じ切っている。
20代に入って演技の幅をどんどん広げており、日本映画において代表的な一人になりつつある
今回は主演で、過去に実際には自らついていく意思を示したものの 世間一般的には誘拐されたとされる女性の役どころで、社会的には悲劇の女性ポジションとされるが、本人は全く違う意思を持っており、本当のことを周りに言い出せず悩みを抱え、背負った十字架ともいえる贖罪を求める女性で、過去を語るところでは胸を締め付けられる演技を見せてくれる。
そして松坂桃李だが、もともとの演技力の高さは 折り紙付きではあるものの 今作では体を使った表現がほぼ出来ず、声のトーンと表情と目の活力さだけで感情などを表現するという難しい役どころ
出演する時間そのものも 広瀬すずに比べると 少ないが存在感を出しつつも、松坂桃李としてのオーラが全く感じられない…という難しい役だっただけに、どのように彼自身が文という役をとらえながら演じたのかが非常に興味を持たれる。
昨年公開された「空白」という映画でもそうだったが、自分の意図しないところで さまざまな歯車が 外され狂わされることで、平和的で平穏な生活を崩されるという悲壮感の 溢れる 雰囲気がみごとに感じられた
これは松坂桃李の俳優としての実力もあってこそだろう。
特に今作では 声そのものも 張り上げるわけではなく 淡々としゃべるだけ。そしてそっけない態度を取って、そっけないセリフを言いつつも相手を気遣っているようにも聞こえる抑揚と声のトーンというものは なかなかできないものではないだろうか
そして 横浜流星の今までの爽やかでイケメンと言う テレビなどで見せていた役柄と全く違うポジションでの登場もポイント。
今回はDVをする男というのも、今までのイメージを覆す素晴らしいできばえだった
本来であればこういった見ている側が 嫌になるような役柄というのは避けると思うのだが 今回は正面からその役柄を受け入れて素直に演じているところがとても素晴らしい
加えて、更紗の子供時代の役者・白鳥 玉季(しらとり たまき)がすごかった
ステップ(20)では、山田孝之の娘役(6歳~8歳)の演技がとても印象的で可愛らしかったが、今回は小学生のリアルな年齢でありながら、年齢以上の女子感を醸し出すなど、役者としての実力の高さを感じさせてくれる。
来月公開の 極主夫道にも出演しているようなので要チェックである。
加えてこの映画の中で描かれるメディアやマスコミの
「勝手なイメージ付けの報道」によって、どれだけ多くの人を傷つけ苦しみを与えているかを考えさせられる映画でもある。
世の中のワイドショーで流れる情報はどこか偏りがあるのは仕方ないにしても、決めつけた発信などは目に余るものがあるのも事実。
それに便乗する愚かな人たちも多い。この作品でも興味本位で写真や動画を取る人が映し出されるが、興味と好奇心からだろうがその姿はとても醜いものである。
世間からの風潮やメディア報道によってさまざまな言葉を浴びさられる現実は、当事者でなければ分からない苦悩があることもあるだろう。
せめてTVで報道されるもの。特にワイドショーにおける過剰ともいえる演出を真に受けてしまわないようにする、見る側のメディアリテラシーの大切さもメッセージとしてもある映画。
その中でも
更紗の周りに言えなかったことの心の傷と、
言ったのに取り合わなかった警察の対応による心の傷
さらに誰にも言えない現実
文の母親からうけた対応による心に受けた傷
世間から受けるパッシングに対する諦め
そういった、どこにもぶつけようがない悲しいの演技を広瀬すず、松坂桃李が見せてくれる映画である。