アキヒロ

ノック 終末の訪問者のアキヒロのレビュー・感想・評価

ノック 終末の訪問者(2023年製作の映画)
3.5
不条理な超常現象が起き、不自由な選択を迫られるというシャマランらしいワンシチュエーションが楽しめる。

いきなり現れた人種もさまざまな4人組は、
世界の終わりを「ビジョン」で見たという。
その終わりは二人のゲイカップルとその養子の子、「三人が自由意志で決定した生贄を一人殺すことにより防げる」という究極の選択。
しかし、彼ら4人の主張が正しいという保証はどこにもない。

近年、日本のセカイ系アニメ(例えば『君の名は。』や『天気の子』)でも、「恋人の命で世界を救えるならどうするか」というテーマが描かれるが、キリスト教圏の監督が描くと重みが違う。

「もし大切な人の命か、世界の終わりか二択に迫られたなら、あなたはどうするか?」という問いかけがこの映画にある。
言わば、シャマランが『サイン』で描いた「神を信じた者だけが奇跡的に救われた世界」の裏返しの世界。
我々のような、ほぼ無宗教に近い日本人が見ると「え、なんでこんな素性の知らない4人の意見を信じるの?」という感想を抱いてしまうと思う。
しかし、これまでのシャマラン作品で重要なのは「神を信じる者が救われる」という通念である。

つまり『サイン』と逆で、「神を信じる者」がアウトサイダーで、主人公たちは信じていない状態。
しかし、「ビジョン」通りの出来事が立て続けに起こる中で、主人公たちの思いは次第に信奉側に傾いていく。
そしてついにエリックは彼らの話を信じて、命を断つ。
もちろん、シャマラン監督は敬虔なキリスト教徒なので、こういう結末になるとは思ったが、
もし日本人がこの話を作った場合は、「全てが偶然だった」というオチになっていたかもしれない。
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