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ジ・エンドのshunのレビュー・感想・評価

ジ・エンド(2011年製作の映画)
3.7
手話の授業の課題となっていたので観てみました。Vimeoなどで無料で公開されています。

ドキュメンタリー映画のような導入から始まり、次第に視聴者が予想しなかった方向へ進む作品で非常に引き込まれました。耳が聴こえないことを自分たちと比べて「かわいそう」であると決めつける社会の考え方の恐ろしさを描いた映画

これ観ていてまず頭に浮かんだのはイギリスの人気ドラマシリーズ「ブラック・ミラー」。新しいテクノロジーがもたらす社会変化を風刺きかせながら描いている感じが似てる。舞台は近未来のイギリスってのも同じだし

「ジ・エンド」では政府や耳が聴こえる人々による一方的な政策や治療によって居場所を失くしていくろう文化が描かれます。
 
観賞していてとても興味深いと思ったことが一つ。13分58秒にアーロンの乗った車の後ろの建物の電光掲示板に映し出される広告に”We only want you to have one child. The perfect one.”と表示されてる。この映画の世界で失われていっているのはろう文化だけではないことを示唆してて手が込んでるなあと思った。科学技術の進歩とともに効率と利益を求める人間の行き着く先にあるのは大部分の人にとって生きにくく、一部の人たちが得をする世界だと思います。

「愛と友情の方が大切」というセリフがありますが、社会で生きる人間にとって一番大事なものでありながら金の前ではないがしろにされがちなこれらをいかに守っていくことができるかがこの映画のような世界に行き着くかより良い世界を作ることができるかの境目だと感じました。
 
とても良くできた短編だと思いました。課題がなかったら絶対辿り着けなかった作品だと思うので先生に感謝です。
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