"逃げる男"をテーマにしたオムニバス作品。
基本的にそれぞれの物語に大きな意味はなく、そのスピード感や緊張感、そして個性的な役者の演技が命になっている。音響のこだわりも相変わらずだ。キャスティングも少ないながら、豪華な組み合わせで、初見のインパクトは強烈だがそれだけで語るべきところが少ないのが残念だ。
「LAST SONG」
伊勢谷友介と粟田麗の存在感が光る。ゾンビ女の不気味なミュージカルがとても不思議空間を作り出している。
逃げることよりもその踊りが記憶される作品だ。
「SHADOWS」
ハードボイルド風だが、意味は不明だ。永瀬正敏が相変わらず何を考えているかわからない空気が面白い。
見た目よりもだらだらとしていて間延びしているのが気になる。
「FLY」
もっとも理解しやすく、日の光の下で撮影されたこともあって、明るいイメージがある。
浅野忠信節で作品を少しずらした緩い空気が漂う。刺客から逃げている緊張感とその微妙に緩い空気と市川実日子の浮遊感が不気味な和音となっている。