マーフィー

こどもかいぎのマーフィーのネタバレレビュー・内容・結末

こどもかいぎ(2022年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

2022/08/15観賞

子どもが子どもの感性のままに気持ちを好きに表現できる場があるのは素敵なことですね。

会議の場で起こる問題(「自分の話を聞いてくれない」、反対の立場から言うと「話が長い」など)に子どもが直面して、どうすればいいのかをそれぞれが考えて学んだり、それぞれの個性を受け入れていく過程は、大人こそ必要なことだと思わされた。
また子どもたちには意見を言える言えないはあるものの、意見については自由で多様。大人の会議もこうであるべきなのに、自由で多様な意見って出にくいことが多いと思います。
子ども会議のように否定されない、意見をきちんと受け入れてくれるような環境だから、子どもは自由に意見を出していける。
ブレストとか本来そういうもんなのにね。大人もっとしっかりしやがれ。

子どもにどうするか考えさせて、先生はできるだけ見守る支援、どんな支援にも共通する大事なことだと思う。
父権主義的な介入の是非をきちんとひとつずつ吟味して、子どもたちを尊重する。
ピーステーブルのような、子ども同士で素直な気持ちを出し合える場所、起こった問題についてちゃんとどうすればいいか考えさせて、行動させる姿勢。
そんな姿勢が子どもの成長に繋がっていく。
例えば三輪車を貸して欲しくて泣きそうになってた子が、なんとか貸してもらえて自分が使えるようになった時に、また貸してくれた子に三輪車を貸す。
あの場面がまさにそれを表現してると思いました。
貸してもらえた子は「貸してもらえなかった悲しさ」などを、
貸した子も「貸してあげたことによる自尊心の高まり(?)」などを学んで、
相手の気持ちを理解できるようになっていく。すごく素敵な成長でした。
先生も「誰か貸してあげて〜」と大声で言ったり、「お願いされてるんだから貸してあげてよ」などの介入はなく、あくまで「誰か貸してくれないかな〜」と呟くに留める。徹底しててほんと良い。

また帽子を屋根に乗せてしまう場面では、子ども自身が考えた解決策をさりげなく後押しして、どうしてもできない部分をちょっと手伝う。
この場面で何より最高なのが、目的を達成した延長で自然発生的に箒での掃除が始まる訳やけど、遊びの時間が終わってからも掃除をしている子どもたちに、先生がしばらく掃除を止めずに話を聞いているんですよね。
どれぐらいの時間かは分かりませんが、子どもたちの素敵な自主性に寄り添うのが最高でした。
時間が限られていて大勢の子を見ないといけなくて、とても忙しいはずの先生たちが、きちんと子どもと向き合う姿勢が素敵です。
先生の関わりの中で「今ストレスを感じてるのでは」と思う場面は正直ある。
少し逸れるけど、それだけ大変な仕事であることはここでは触れられないし、
こんなに尊い仕事なのに世間的には待遇面でまだまだ課題がある業界であることも触れられない。
子どもたちがメインの映画なので、そこに触れるのは野暮でしょうね。
ただ大変さについては卒園式のユミコ先生の言葉と涙から、ほんの少しだけ伝わってくる気がしました。

子どもたちの中ではサヤちゃんとソウちゃんの成長がとても印象的。
子どもは本当に短期間でぐんぐん成長しますね。

やっぱり私は子ども好きやわと再確認した。
元気で発想が自由で素直で素敵。
知らん子の卒園式なのに泣いてしまう。


子どもたちの中には、大きくなった時に子ども会議のことを断片的にしか覚えていない子もきっといるでしょう。
どんな話題を話し合ったか、自分がどんな意見を言ったかなんて忘れているかもしれません。
でもこの子ども園で培った「考える力」「気持ちを伝え合う力」は必ず子どもたちの基盤として残っていると思います。
貴重な経験、羨ましい。
マーフィー

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