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ヒンターラントのsymaxのレビュー・感想・評価

ヒンターラント(2021年製作の映画)
3.6
"戦地から戻ると祖国は変わり果てていた…"

第一次世界大戦終結後、ロシアの捕虜となっていたペーターは、ようやく解放され祖国オーストリアに帰還した。

だが、その不在の期間は長過ぎたようだ…王政はなくなり、社会は混沌とし、帰還兵は虐げられた…妻子は家を離れたった一人…絶望感に苛まれるペーター…

…発見された遺体は、拷問され無惨に殺されていた…その遺体の荷物にはペーターの名と住所が書かれたメモが…

ペーターを犯人として逮捕した若い刑事に上司である警視は言う…ペーターは元捜査官だ…しかも優秀な…

発見された遺体は、共に苦労した戦友…私人として捜査に参加するペーターは、徐々に事件の核心に迫っていく…

全編ブルーバックで撮影され、まるで悪夢を見ているかのように歪んだ世界で繰り広げられる残忍な連続殺人事件…戦争とその後の捕虜生活により心が歪んでしまった主人公ペーターの心情をそのまま視覚化したような美術は秀逸です。

"シン・シティ"のような感じを受けつつ、散りばめられた謎を解き明かしていくストーリー展開に引き込まれて行きます。

特に印象深いのは、悲惨な戦争により社会が混乱する中で、その戦争のおかげで社会進出する事が出来た女医ケルナー博士の存在。

深い闇の世界に苦しむペーターに対して、"私は今日を楽しむ…明日は明日よ"と言ってのける彼女の姿は、本作により深い余韻を持たせる存在となっています。

オープニングとエンドクレジットが本編以上に素晴らしい…エンドクレジットの仕掛けは実にシャレてます。

映像、ストーリー共にカッチリ作り込んでいるにも関わらず、ラストの肝心要のところでの唐突感と投げっぱなし感…そこは残念…勿体無い…
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