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呪詛のSSSのネタバレレビュー・内容・結末

呪詛(2022年製作の映画)
2.7

このレビューはネタバレを含みます

 台湾で実際に起きた事件を基に製作されたホラー作品。監督はケヴィン・コー。SNSで話題沸騰、スマッシュヒットした本作ははやくもFacebookでは三部作構想が発表されている。後述するが極めてSNSと相性のよい現代のホラー作品だと感じた。以下、ネタバレ全開で感想。

良かった点
・呪いのビデオ×モキュメンタリーのフォーマット
ホラー作品とモキュメンタリー(フェイクのドキュメンタリー)の相性の良さは古くは『ブレアウィッチプロジェクト』や『REC』『パラノーマルアクティビティ』、怪獣だけど『クローバーフィールド』など先駆者により既に証明されていた。本作では『リング』にあったような呪いのビデオによる拡散型ホラーという形式をとることで観客にも呪いをかけるという極めて悪質(ほめてます)な仕掛けを行う。出来の良さのみならず設定と相まって他人にも視聴を勧めたくなる仕組みになっているのは商業的にも上手い。

・気味の悪い密教の美術造形や雰囲気全て
6年前のフッテージとして主人公が訪れる田舎の美術衣装が何から何まで禍々しくて観ていて笑ってしまう。儀式の場の不気味さはもちろんのこと例の地下道の仏像など“視たら確実にヤバい”と思わせる造形が最高に決まっていた。


賛否両論点
・主人公リー・ルナオンのキャラクター
前提として演じたツァイ・ガンユエンは非常に良い仕事をしている。物語の仕掛けとして存在するキャラクターなので仕方ないのだがカラクリが明かされる前から自分勝手さが滲み出ており観客としては全く共感できない存在だった。娘への愛情をダシに観客や他の登場人物を寄り添わせようとする意気込みは買うものの


悪かった点
・ふりかえりババア
本作は化物や幽霊でなく怪異という事象そのものが降り掛かる系なのに終盤のふりかえりババアの演出は明らかに化物系ホラーの演出である。おそらく予告編などのフックに使うための勝負ショットだとは思うが脚本の流れを踏まえても作品とマッチしてない感が強い。本作自体がさまざまなホラー映画のエッセンスをてんこ盛りしているので気にならないといえば気にならないが。

・動画ファイル
色々な怖い映像を見せるのが目的なのでケチをつけるのは無粋なのだがルナオンの両親が引かれる映像をご丁寧にファイル名まで名付けてMacに保存していることに笑ってしまう。あと警察署の監視カメラ映像はどうやって仕入れたのか。幼稚園で娘に伸びる謎の手の映像に至っては怪異が娘に執着していることを提示するためとはいえ、心霊番組の手法そのものな映像演出に笑う。観ている最中に脳内で「おわかりいただけただろうか」とナレーションが流れるほどそのままである。このようにルナオンの動画コレクターっぷりは狂人の域にあるといっても過言ではない(一応理由付けはあるが)。また、終盤で少なくとも3分以上の“地下道の映像”は何十通も送られていたようだけど通信制限大丈夫なのだろうか。台湾はど田舎でも5Gが普及しているのかもしれない。

総評
ツッコミどころは多々ありつつも製作費3,300万台湾ドル(=1億4,000万円) で非常に良くできたホラー作品である。三部作構想とのことで残された娘(ドゥオドゥオ)のその後が描かれるものと思われる。事象そのものと対峙して呪いを解く方向へ進むのか、試聴者を巻き込んで拡大した呪いが台湾全土または世界へ広がっていくのか気になるところである。
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