なお

呪詛のなおのレビュー・感想・評価

呪詛(2022年製作の映画)
4.2
"禁足地"

そのあまりの恐ろしさからフィルマはもちろん、Twitterなど各種SNSで話題となった台湾発のアジアン・ホラー作品。
今年の3月に台湾にて封切りされ、台湾映画史上では最も高い興行収入をマークしたホラー映画となったそう。

本作は2005年に台湾で実際に発生した、あるカルト宗教が発端となって起こった家族6人の怪事件をベースに制作されている。

✏️観客参加型ホラー
いやはやこれはまた…
日本以外のアジア地域からまたも高品質なホラー作品が出てきてしまった。

主人公のルオナンたちが手に持ったビデオカメラ、またスマホカメラ映像越しにお届けされる、ファウンドフッテージ的作品。
そのため作品のほぼ全編を通してカメラ側のアングルから見た「固定視点」またはカメラを持った人物から見た「POV(point of view:一人称)視点」であり、忍び寄る逃げ場のない恐怖との戦いは、自宅での鑑賞でも臨場感バツグン。

余談だが、同じくPOV視点であるテレビゲーム作品『バイオハザード7』を「怖すぎる」という情けない理由でプレイを断念した自分からするとPOV視点はやっぱメチャクチャ怖い。

山奥に潜むカルト宗教団体、絶対に足を踏み入れてはならない地下洞窟、何かに憑依され導かれ、奇声を発し奇行に走る少女。
生理的に大変気持ち悪く感じるシーンも多々あり、ジャンプスケアやグロテスクな描写はもちろんのこと、蓮コラを始めとする集合体恐怖症の方は鑑賞に細心の注意を払う必要がある。

そしてこの『呪詛』の特異な、というか「おいふざけんな!」と思わせられる点は、いつの間にか観客自身もこの世界観の「関係者」にさせられてしまうところだ。

重大なネタバレは避けるが、観客をいつの間にやらこの怪事件の渦中に引きずり込むこの理不尽さ。
まさに「観客強制参加型」のホラー。

どんなに目の前で人が死のうと殺されようと、ふつうのホラー作品ならば観客はいわゆる「第4の壁」に守られており、実生活にはなんの影響もない。
しかし本作は、「ルオナンたちが目撃した怪事件を記録したビデオ映像である」というスタンスを取ることにより、何とも言えぬ現実味を持たせることに成功。

何かのメタ発言をするでもなく第4の壁をぬるりと超えてくるこの構図は、POVという映像作品の性質をよく利用できている。

☑️まとめ
ネット上で話題となるのも納得の、実に人を唸らせてくれるシチュエーションと映像表現。

自分は未だに、例の呪文を詠唱するあのシーンの模様や紋様が網膜に焼き付いて離れない。
何とも後味悪く気味の悪い、高品質なアジアン・ホラー作品。

🎬2022年鑑賞数:90(37)
※カッコ内は劇場鑑賞数
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